税金コラム|中小企業こそ活用したい 不要資産の早期処分による節税
耳より税金コラム 最終回
税理士法人しんわ経営会計
代表社員(税理士・行政書士)井上一生
中小企業こそ積極活用したい
不要資産の早期処分による節税
日本とアジアの競争力の差とは?
「NECと日立の合弁でDRAMを製造するエルピーダメモリは、台湾・力晶半導体と合弁で、台湾にDRAM生産合弁会社を設立した。両社合計で約1600億円を投じ、07年7〜9月期に量産を開始する計画」と昨年末報道されました。
なぜ、台湾なのでしょうか? 日本で工場を作れば、国内投資による経済効果、製造ノウハウの流失防止、雇用の創出等、さまざまなメリットも多いはずです。
我が国では中小企業だけでなく、大企業までもが韓国、台湾、中国などの企業に追い上げられています。
もちろん各種の原因はありますが、その大きな理由を製造業についていえば、設備の更新や投資が日本ではやりにくいことがあげられます。
なぜ、日本では設備投資がやりにくいのか? 実は日本の企業の足を引っ張っているのが、韓国や台湾に比べて、日本の税法で定められている減価償却の長さだといわれています。これが長いと価値のなくなった設備でも資産として計上し続けなければなりません。また、1年あたりの減価償却額が低いため、その分、税金を多く納めることにもなります。
国内だけの競争でしたら問題は少ないですが、今や国際競争の時代。これを投資と更新のしやすさという面からみれば、減価償却期間の短さの競争でもある。その部分で日本は不利な状況にあるわけです。
しかし、国際的なイコールフッティング(同じ土俵に立つという意味)を確保するとして、日本政府もようやく、償却期間を短縮する方向に舵を切り始めました。それが、今春の税法改正での「250%定率法」です。詳細は割愛しますが、償却率を高め、毎年の減価償却額をアップして、償却期間を短縮するものです(本誌19号にて詳述)。
償却額がアップすればその分、税収が減るため、財務省の抵抗は強かったとも聞きます。しかし、し烈を極める国際競争の中で、そうもいってられない状況だということに、ようやく気がついたのではないかと思います。
税収がどうのという前に、企業や優秀な人材が海外に流出しないのかという、納税者が日本に残るかどうかの問題だからです。解決策の1つとして出てきた政策が、減価償却率のアップや償却期間短縮といえるでしょう。
この政策は、何も海外展開する大企業だけの特権というわけではありません。国内で活動する中小企業でも積極的に活用し、減価償却アップによる節税を実施。企業力を高める好機としたいものです。
そのための手始めは、やはり設備の買い換えでしょう。07年4月以降の新規取得資産は、改正税法の「250%定率法」が適用になります。つまり、期間短縮した減価償却機能がもれなくついてくるようなものです。更新の必要な設備はないか、まずは検討することをお勧めします。
不要資産を処分し経費化することで節税
また、会社にある不要・遊休資産を早期処分し、経費化する節税も有効です。
会社を経営していると、どうしても古くなって機能が落ちたり、使用できなくなり、収益を十分に生み出さない固定資産が発生します。償却が終わったものであれば残存価格でしかありませんが、耐用年数の残っている場合は、使えない資産でも帳簿にその価値が大きく残っているものです。
節税を望む場合、不用資産をいち早く探し出し、処分を検討しなければなりません。処分とは、売却や廃棄、帳簿価格を下げる評価減のことです。このような不要資産を残ったままにしていると、財務体質を傷つけることになります。
売却・処分したり、除却したり、償却、評価減をしてバランスシートから切り離すこと。すなわち不要な資産をオフバランスすることによって、会社の価値(資産の効率性)も高まるわけです。
これは基本的には「減損会計」の考え方と同じです。この言葉を聞いたことがあると思いますが、会社が保有する固定資産のうち、稼動効率(=収益性)が低下して投資したお金が回収できなくなったものを探し出し、回収ができない部分に相当する損失を計上することです。
「減損会計は、大企業の会計基準だから中小企業には関係ない」とおっしゃる方もいますが、それは大きな考え違いです。当然、中小企業にも少なからぬ影響があります。
例えば、バブル当時に購入したゴルフ会員権の値下がりはどのくらいなのか。銀行の融資審査では、必ずそのような視点でチェックが厳しく行なわれます。
固定資産に遊休資産はないのか。稼動状況が悪く投資の回収が困難なものはないのか。そのような視点で、固定資産の1つ1つが厳しく点検されます。
ですから、健全な経営のためには、積極的に不要、遊休資産の処分と実際の現在資産価値に減損させる企業行動は必要なのです。
見方を変えれば、会社は設備投資の意思決定を行なう時点で、技術革新の潮流を読み、最新技術情報を常に提供してくれるしっかりした購入先を選ぶことも大切でしょう。将来の稼動収益により投資が回収できるのか、という慎重な視点が要求されます。
除去費用がかからない「有姿除去」という方法
不要資産が見つかった場合は、まず売却が考えられます。売却によって計上された売却損は、税務上の損金として計上できます。
もし売却先が見つからないなら、やむ得ず捨てる処理(除却処分)がされます。不要資産を除却した場合、取り壊したり、廃棄すれば、それには客観的な事実があります。その事実から、税務上の損金を計上できます。できれば業者から廃棄証明書をとることが、後の税務調査で無駄な疑いを防止できます。
しかし、そのような証明書がなくても除却した事実を証明できればよいわけで、それほど難しい作業ではないと思います。
ところが、取り壊しや廃棄に多額の費用がかかる場合があり、そのような場合、除却処理を迷うケースがあります。その場合に有効なのが、「有姿除却」という方法です。有姿除却とは、実際に取り壊したり廃棄していなくても、今のまま除却処理を行なうことです。有姿除却が税務上認められるためには、
①その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産であること
②特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、その製品の生産を中止したことにより、将来使用される可能性のほとんどないことが、その後の状況等からみて明らかであること
これらの客観的事実が必要です。まさに「今後の使用可能性がない」という点がポイントであり、その点をいかに立証したらよいかが問題となります。使用可能性がないということが前提ですから、その点を何らかの証拠資料により立証することが必要です。
次のような奥の手もあります。すなわち、客観性を確保するために、敢えて物理的に使用できない状態にするわけです。このことも実務上よく行なわれます。
例えば、機械装置の作業の命令系統を司るような最も重要な部品を破壊し、写真に納めたり、その部分を取り出し、業者から廃棄証明を受け取るなどの方法です。そのようにすれば、使用可能性がないということが証明しやすくなります。
いずれにしても資産をきちんと管理し、資産効率の高い経営を行なうということが、結果的に節税にもつながるということを、ご理解いただけたと思います。





