舗装の新技術でヒートアイランドの抑制に挑む

企業研究
日本道路  http://www.nipponroad.co.jp/


道路舗装の新技術を積極推進
ヒートアイランドの抑制に挑む

都市部ではヒートアイランド化が着実に進んでいる。その原因の1つとされる道路舗装では、業界を挙げて“熱対策”に乗り出している。老舗で大手の日本道路も、画期的な新工法で貢献する。

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シャットファルトで舗装された銀座通り





ヒートアイランドとは

 今年は例年にない猛暑だった。8月16日には埼玉県熊谷市と岐阜県多治見市が40.9度を記録。国内最高気温を74年ぶりに更新した。熱中症で倒れる人や亡くなる人が相次いだ。
 この暑さは全国的な現象だったが、特に都市部の人にとっては耐え難いものだったのではないか。昼間、ビルの谷間を歩けば、ドライヤーを吹き付けられているかのようになり、どっぶりと熱気に覆われ、夜になっても気温がいっこうに下がらない。


 都市部がその周辺部よりも高温化する「ヒートアイランド」化が進んでいる。なぜ高温化するかといえば、太陽光の熱をためやすいアスファルトやコンクリートで地表面が覆われ(緑地や水面が少ない)、建物や自動車からの排熱もすさまじいからだ。
 実際、東京ではこの100年間で年平均温度が3.0度も上昇している。中小都市の平均が1.0度なので異常に高い。また、最近の東京沿岸部は高層ビルの建設ラッシュ。海からの風通しが遮られ、より熱がこもりやすい都市構造となってきた。


 ヒートアイランド化は都市部だけの問題ではない。熊谷市の場合、秩父山地からの吹き下ろしがフェーン現象を起こすのに加え、東京から熱気が風で運び込まれ、高温化しやすいという。このままヒートアイランド化が進展すると、都市部やその周辺部は真夏、40度前後の気温が当たり前になってしまう。

 



路面に熱をためない

 これに対し、各分野で官民挙げた対策が始まっている。ヒートアイランド化の原因の1つとされる道路舗装も、業界を挙げて対策に取り組んでいる。日本道路もその1社だ。
 常務執行役員の大村宏夫氏は「10年ほど前から研究者や樹脂メーカーなど外部の方も交え、業界内でヒートアイランド対策となる新しい舗装工法を研究してきた。当社としても、国や自治体と協力し、全国各地で新工法を実践している」と話す。


 日本道路は、道路舗装と舗装材製造の専門会社で80年弱の歴史を持つ。8000億円といわれる道路舗装国内市場の中で、約8%のシェアを持つ業界大手だ(2006年度の連結売上高は約1450億円)。東京湾アクアライン、中部国際空港など大型公共インフラの建設にも多く関わる一方、環境経営を積極的に実践し(ISO14001を01年に取得)、ヒートアイランド対策にも取り組んできた。


 営業本部営業第二グループ部長の小林繁之氏はこう話す。「アスファルト舗装は、太陽熱を吸収しやすく、最高気温35度の晴天時で路面温度は55度ほどに達する。最近の都市部は風が通らないため、路面温度がなかなか下がらず、ジワジワと高熱を放つので、夜も気温が下がらない」。
 つまり、アスファルト舗装の面からヒートアイランド化を緩和するには、熱ハケをよくし、熱吸収を抑えなければならない。そこで日本道路が手掛ける新しい舗装法が保水性舗装「クールファルト」と遮熱性舗装「シャットファルト」の2つだ。


 アスファルト舗装では、骨材(砂利や砕石)をアスファルト(石油に含まれる半固形物質)で結合した「アスファルト混合物(アスコン)」を路盤の上へ敷設するが、クールファルトでは、アスコンの中に保水性の高い特殊材料を充填する。
 この保水層は、雨が降ると水をたっぷりとため込み、そして晴天時に水を蒸発させる。その際、気化熱の原理で路面から熱を奪う。まさに、「道路自らが打ち水を行なっているようなもの」(図1)だ。さらにクールファルトは舗装面の色が白っぽいため太陽光を反射しやすく、熱吸収を抑える役割も果たす。


 その効果は「水を十分に含んだ降雨直後の晴天時なら、普通のアスファルト舗装に比べて、路面温度は10〜15度くらい低い」という。条件によっては、夏場の晴天時でも路面温度が気温とさほど変わらなくなることもある。普通の打ち水でも周辺の気温を1〜2度下げるといわれるが、同じような効果もあるだろう。
 日本道路は02年からクールファルトの施工を手掛けており、これまで全国20カ所ほどで実績がある。例えば、大規模な再開発で高層ビルの新集積地となり、ヒートアイランド化の象徴となった東京・汐留の街路でも一部採用されている。

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△左:大村宏夫常務   △右:小林繁之部長

 



これからが本格普及期


 ただ、クールファルトにも課題がある。それは「雨が長く降らないと保水層が乾いてしまう。また表面が白っぽく、太陽光の照り返しでドライバーや歩行者が多少まぶしく感じる」(小林部長)という点だ。
 そこで登場したのが、遮熱性舗装のシャットファルトだ(図2)。普通のアスコンは黒っぽいため、太陽光をどんどん吸収し、熱を蓄えてしまうが、シャットファルトはアスコン上に太陽光を反射しやすい樹脂を塗布することで反射率を高め、蓄熱を防ぐ。「普通のアスファルト舗装に比べて、夏場で路面温度を10度ほど低く抑えられる」という。


 さらにシャットファルトは目に見えない赤外線を高い割合で反射する一方、樹脂に混ぜ込む特殊塗料の色を濃くすれば、可視光線の吸収率を高められる。つまり、熱吸収と照り返しとのバランスをとりやすい。
 クールファルトと比べると、天候に左右されず路面温度を低減でき、既設の舗装路へも表面へ樹脂を塗布するだけで施工が済むことから、日本道路では最近、シャットファルトの施工実績が増えているという。有名なところでは、東京の銀座通りでも使われる。


 このような舗装法が広がれば、ヒートアイランド化は多少でも和らぐだろう。ただ、対策は緒に就いたばかり。日本道路も、国などの要請から全国50カ所ほどでヒートアイランド対策の道路舗装を実施してきたが、「まだ小規模な実証試験レベルのものが多い」という。実際、東京区部の道路面積は約100k㎡(総面積の16%)だが、新工法を用いた舗装路はその0.3%ほどといわれる。
 それでも大村常務は、次のように話す。「この5年ほどの取り組みで、ヒートアイランド対策の効果に加え、道路舗装としての長期にわたる品質の維持などが実証されてきた。これから国や自治体での取り組みが本格化してくるはず。


 我々としても樹脂メーカーなどと協力し、熱対策の効果をさらに高め、コストを下げる努力をしなければならない」。
 日本の道路は、世界的に見れば極めて快適で良好だ。それは、日本道路のような専門会社の技術革新によって支えられてきた面が大きい。ますます大きな社会問題となるヒートアイランド対策においても、同社の活躍が期待できそうだ。
 

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