決算分析実践講座 決算短信「表紙」はこう読む!

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企業業績の大枠をつかむ
決算短信「表紙」はこう読む!


この4月から5月にかけて、上場企業の多くが決算短信を発表した。3月期決算の企業が多いため、決算短信の発表は、例年この時期に集中する。決算短信とは決算書の速報版のようなもので、貸借対照表や損益計算書をはじめとした計算書や報告書などから構成されている。
速報版といっても数十ページにも及ぶものが多く、すべてに目を通すにはそれなりの時間が必要だ。しかしながら、決算短信の1ページ目(表紙)だけでも、重要な経営情報が記載されており、業績概況の把握は十分に可能だ。決算短信はホームページに公開する企業が多く、手軽に入手可能なだけに、これを活用しない手はないだろう。
ここでは5月15日に発表されたヤマダ電機の平成19年3月期決算短信(55ページ)を用い、表紙の読み方について解説しよう。




表紙は企業情報の宝庫

 決算短信の表紙は「1.平成19年3月期の連結業績」「2.配当の状況」「3.平成20年3月期の連結業績予想」の3項目で構成されている。
 まずは「1.平成19年3月期の連結業績」から見てみよう。ここは、さらに(1)連結経営成績、(2)連結財政状態、(3)連結キャッシュフローの状況の3項目に分かれる。

 (1)は過去2期分の売上高や利益とその伸び率が記載されている。「売上高」はその会社の事業規模を表し、「営業利益」は主に本業で稼ぎ出した利益である。この二つの増減を見るだけでも、その会社の基本的な経営状況を把握できる。

 例えば売上高を大きく伸ばしていながら、営業利益はダウンするといったケースがある。この場合、利益を度外視した無理な安売りをしていたり、必要以上の無駄なコストをかけていることなども予想される。
 反対に売上高は横ばいやダウンだが、営業利益をアップさせているケースもある。これは粗利益のアップや、コスト構造の改善などプラス要素が予想できる。このように企業の基本的な経営状況を推し量るために、まずはこの2つをチェックしたい。

  「経常利益」は、営業利益に本業以外の収支(受取利息や支払利息等)を加味した利益だ。これはその企業の収益力を示す代表的なもの。例えば営業利益に比べて経常利益が大きく下がっている場合などは、銀行などからの借入金の支払利息が、重くのしかかっている可能性がある。この場合、いくら売上高や営業利益が好調であっても、収益力の高い企業とはいえない。財務体質の改善策が打たれているかなどをチェックする必要がある。

 ヤマダ電機の19年3月期は、売上高、営業利益、経常利益とも二桁のアップであり、当期利益(=税金等支払い後の最終的な儲け)が434億2000万円であったことが分かる。

 


PERは株価の判断材料の1つ

 その下段には、代表的な経営指標が示されている。
 まず「1株当たり当期純利益」は、当期純利益を発行済み株数で割ったものだ。当期純利益を1株当たりに換算するといくらになるのかを見るもので、「EPS(Earnings Per Share)」とも呼ばれ、重視される指標の1つである。

 というのもEPSは、株価収益率(PER/Price Earnings Ratio)を導くための指標だからだ。PERは株価をEPSで割ったもので、単位は倍。現在の株価は、EPSの何倍の値がついているかを示し、株価が割安か割高かを判断する材料の1つになる。

 ちなみに東証1部上場企業の平均PERは20倍前後(株価がEPSの20倍前後)といわれる。ヤマダ電機の場合は28.16倍(6月25日現在)だ。これをどう判断するかが、投資家の次の行動(売るか、買うか、保持するか)を決める材料の1つになる。
 その隣の「潜在株式調整後1株当たり当期純利益」とは、転換社債型新株予約権付社債など将来は株式となる可能性があるが、現状では株式になっていないものを考慮して計算した1株当たり当期純利益である。

 



投資家が重視するROE

  「自己資本当期純利益率」はROE(Return on Equity)とも呼ばれ、自己資本を使ってどれだけの利益をあげたかを示している。
 投資家からすれば、自分が投じた資金がどれだけ効率的に使われたのかを、利益率として計る指標であり、シビアにチェックすることが多い。一般的には10%以上が優良企業の目安とされるだけに、ヤマダ電機の15.9%というROEに合格点を付ける投資家も多いのではないだろうか。
 ROEは基本的に、当期純利益÷自己資本×100という公式で求められる(決算短信の計算では、自己資本は当期と前期を足して2で割った平均値が用いられる)。

 また、従来の自己資本は、貸借対照表の「資本の部」の合計金額をそのまま用いればよかった。だが、昨年施行された新会社法により「資本の部」が「純資産の部」に変更され、内容も変わったので注意したい。
  「純資産の部」では、これまでの「資本の部」に相当する金額を「株主資本」と表記することに加え、新たに「評価・換算差額等」や「少数株主持分」などの科目が加わった。これらの総合計額をそのまま自己資本としては、18年3月期以前の数値と整合性が取れない可能性がある。

 そこでヤマダ電機の場合、19年3月期の自己資本については、純資産から少数株主持分を差し引いた金額(2963億3200万円)を参考値として付記している。
  「総資産経常利益率」はROA(Return on Assets)とも呼ばれ、企業の基本的な収益力と効率性を見る指標だ。仮にROAが低い場合、その問題点は利益率の低さなのか、資産の活用法なのか(あるいはその両方)という基本的な経営方針を判断するためなどに用いられる。
 経常利益÷総資産×100で求められ、決算短信では総資産に当期と前期の平均値を用いている。



安定性を計る自己資本比率

 (2)の連結財政状態の中では、財務面の安定性を計る「自己資本比率」が重要だ。その公式は、自己資本(前期した参考値)÷総資産×100で求められる。ここが低いということは、それだけ借入金などの負債が多いということで、財務面での安定性を欠くと判断されることが多い。
 ただし、企業経営においては積極的な投資を必要とする局面も多く、そのために借入金が膨らむことも考えられる。自己資本比率が低い場合は、その要因をチェックした上で良否を判断することが重要である。

 また、前述したROEを判断する際は、合わせて自己資本比率をチェックしたい。自己資本が少なければ、これを分母とするROEは計算上、高まるだけに、これだけを判断するのは危険である。ROEが高く、しかも自己資本比率が高い企業が、株式市場で評価される企業である。
  「1株当たり純資産」は純資産を発行済み株数で割ったもの。単位は円で、BPS(Book-value Per Share)とも呼ばれる。そして、仮に会社を解散して財産を株主に払い戻した場合に、1株当たりいくらが払い戻されるかを表す指標でもあることから、解散価値などとも呼ばれる。

 BPSは、投資判断の重要指標の1つである「株価純資産倍率(PBR/Price Book-value Ratio)」を導き出すために用いられる。
 PBRは、現在の株価がBPSの何倍の値で買われているかを示すもの。株価÷BPSの公式で算出され、単位は倍である。

 仮にPBRが1倍を下回った場合は、株価がBPSよりも低いことになり、割安株と評価されることが多いようだ。逆に注目ベンチャー企業などの場合、PBRが何十倍にもなるケースがある。これを割高とみるか、将来的な資産価値向上への期待値とみるかで、投資判断が分かれるだろう。
 ちなみにヤマダ電機の3,103円というBPSを基にPBRを算出すると4.16倍(6月25日現在)だ。投資家はこれを判断材料の1つとして、次の行動に移るわけである。

 

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決算短信表紙を読み込むための公式

●1株当たり当期純利益(EPS)
    EPS(円)=当期純利益÷発行済み株数

●株価収益率(PER)
    PER(倍)=株価÷EPS

●自己資本当期利益率(ROE)
    ROE(%)=当期純利益÷自己資本×100
     ※自己資本は当期と前期の平均値

●総資産経常利益率(ROA)
    ROA(%)=経常利益÷総資産×100
     ※総資産は当期と前期の平均値

●売上高営業利益率
    売上高営業利益率(%)=営業利益÷売上高×100

●自己資本比率
    自己資本比率(%)=自己資本÷総資産×100

●1株当たり純資産(BPS)
    BPS(円)=純資産÷発行済み株数

●株価純資産倍率(PBR)
PBR(倍)=株価÷BPS

●配当性向


※1)現金同等物
あまり価値が変わらず、簡単に現金化できる、短期的な預金のこと
(3カ月以内の定期預金、譲渡性預金、コマーシャルペーパー等)
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キャッシュフロー計算書とは

 (3)の連結キャッシュフローの状況とは、期末段階でいくらのキャッシュ(現金及び現金同等物/P53※1)が手元にあるのかを示している。ヤマダ電機の場合は、平成19年3月末で410億2900万円のキャッシュが手元にあったわけだ。
 キャッシュフロー計算書は、2000年3月期から作成が義務づけられた財務諸表で、企業のキャッシュ創出能力や支払い能力等を示す。
 企業の収支を示す財務諸表には損益計算書があるが、それとの違いは計上するタイミングの違いである。

 例えば100万円の売り上げがあった場合、損益計算書は売り上げが立った段階で、この金額を計上する。しかし、キャッシュフロー計算書では、100万円が現金で回収できた段階まで計上しない(経費の場合も支払った時点で計上する)。
 現金商売であれば損益計算書とキャッシュフロー計算書への計上タイミングは同じだが、売掛の場合、帳簿上は売り上げが立っても、実際の現金化は先になる。キャッシュフロー計算書は、これが現金化された段階で計上し、実際のキャッシュの流れを把握するのである。

 さらにキャッシュフロー計算書ではキャッシュの流れを営業活動、投資活動、財務活動の3つに区分している。営業活動とは本業に関するキャッシュの出入りであり、投資活動は設備投資や有価証券などに関するキャッシュの出入りだ。そして財務活動とは、借入金・社債・資本などに関するキャッシュの出入りを示している。
 ヤマダ電機の平成19年3月期は投資活動が523億円の赤字になっているが、これは新規出店や店舗改装などへの設備投資を積極的に行なったことを意味する。新店舗に積極投資し、営業力を強化することで、営業活動のキャッシュをさらに増やすという循環が、ヤマダ電機の基本施策といえるだろう。

 



配当性向の意味

  「2.配当の状況」では、「配当性向」に注目する関係者が多い。配当とは株主に対する利益の還元であり、その原資は当期純利益である。配当性向とは当期純利益に占める配当金の割合だ。当期純利益の何パーセントを配当金に回しているのかを示すが、計算式は、1株当たり配当金を1株当たり当期純利益(EPS)で割った方がより正確であろう。

 配当性向が大きいほど、株主への還元額が大きい。東証一部上場企業の平均は20%前後といわれ、最近は欧米企業並みの30%を目標にする企業も少なくない。それだけ株主が安定する可能性が高くなるからだ。
 しかしながら、成長企業では、配当性向が低くとも容認されるケースが多い。当期純利益の配分を、配当よりも投資に多く回せば、総資産や利益が拡大し、株主価値が高まる可能性が高いからである。ヤマダ電機も6.3%という配当性向も、これに当てはまるだろう。

 このことは「3.平成20年3月期の連結業績予想」を見ても明らかだ。ここにでは今期業績のうち、売上高、営業利益、経常利益などについて、中間期と通期の会社予想数字を、増減率と共に示している。ヤマダ電機は引き続き二桁伸長の予想を発表しているが、その背景には新規出店等を基軸とした積極的な投資策があるからだろう。

 ただし、これはあくまでも予想であり、これより上向くこともあれば悪くなる可能性もある。その変化を投資家がより正確に把握できるよう、今は四半期ごとの業績が開示されている。また、必要に応じて業績見通し修正なども発表される。これらをチェックすることも重要である。
 このように決算短信の表紙には、多くの重要な企業情報が掲載されている。これを上手に使うだけでも、企業業績の大枠を知ることは十分に可能である。

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