ビジネスチャレンジャー工房ヒゲキタ◎北村満氏 自作プラネタリウムで全国行脚
ビジネスチャレンジャー
工房ヒゲキタ
北村 満氏

工房ヒゲキタ
設立:1997年
事業内容:プラネタリウムの出張上映会を全国で開催/子供向け工作教室や保育士対象の講習会など
住所:石川県金沢市東市の瀬13
連絡先:076-235-1727
手づくりの「凄さ」を伝えたい
自作プラネタリウムで全国行脚!
「宇宙への興味はもちろん、自分でものを作ることの楽しさや凄さを、全国の子供たちに伝えていきたい」。
こう語るのは、工房ヒゲキタの北村満氏だ。モバイルプラネタリウム(移動式プラネタリウム)を抱えて東奔西走。全国の小学校やイベントなどを中心に上映会を開催している。
星を映し出すドーム型テントは直径約4m、高さ約2.8mと、ほぼ小学校の教室と同サイズで子供なら約25人を収容可能という。1回の上映時間は約30分。プラネタリウムによる季節の星座上映とオリジナル立体映像の投影という2部構成である。
北村氏の移動式プラネタリウムで特筆すべき点は、すべて手づくりであることだ。投影機は、台所用のアルミ製ボウルを組み合わせて円形にしたもの。夜空の星の位置に約6000個の穴を開け、肉眼で見ることのできる六等星まで表示した。等級によって星の明るさが異なるため、開ける穴の大きさも調整しなければならない。
この穴に豆電球の光を投下させて夜空を再現するためのスクリーンも自作。製版フイルムを入れる袋を利用したドーム型テントは、扇風機を使って空気を送り込み膨らませる。
オリジナル立体映像は、つくば科学万博で見たパビリオン(展示館)の映像をヒントに考案したものだ。土星やロケット、怪獣といった自作物を赤と青の光を通してスクリーンに投下。その映像を立体メガネで見ると、映像が空間に浮かび上がって見えるという仕掛けである。「手作り立体映像」と呼ぶこの仕組みは、06年に学研科学大賞で優秀賞を受賞した。
子供たちにも大人気で、「いつも立体映像の印象が強すぎてプラネタリウムは影が薄くなってしまう」と苦笑する。
原点は幼少時代の体験
手づくりの移動式プラネタリウムによる出張上映会を始めたのは97年のこと。写植オペレーターとして勤めていた印刷会社を辞めて1年後のことだった。「特にこれを本格的に仕事にしようと思ったわけではなく、何かやらなければという中で、最後に残っていたのがプラネタリウムだった」と当時を振り返る。
子供の頃から宇宙が好きだったという北村氏。その原点は、小学生の時に見たプラネタリウムだった。金沢の田舎町で幼少時代を過ごしていた当時、たまたま小学校にプラネタリウムが出張してきたのである。この時の体験が心に残っており、大学時代には天文同好会に参加。学園祭に出展するため、自作プラネタリウムをひとりで制作した。実は、現在使っている投影機はこの時に作ったものを改良しながら使い続けているのだ。
以後、プラネタリウムはいつも身近にあった。部屋の中に作った投影用ドームの中で生活していたほど。自宅に遊びに来る友人たちに、上映しては喜んでもらっていた。引越しで部屋が広くなるのに合わせて、ドームも大きくなったという。
大学卒業後は、金沢に戻り印刷会社に就職。「仕事は楽しかった」と、プラネタリウムは趣味として時々眺める程度になっていた。
そんな状況を一変させたのが、仕事場に押し寄せたコンピュータ化の波だった。手先を使う細かな写植の仕事が好きだった北村氏はコンピュータ化になじめず、仕事を辞めてしまう。
働くあてもない中で、無為に過ごす日々。「プラネタリウムを見て感動した体験を子供たちに与えることはできないか。幼少の頃に見たプラネタリウムの感動を大人たちに、もう一度思い出してほしい」。
トレードマークの口ヒゲに由来する愛称“ヒゲキタ”にちなみ、工房ヒゲキタを設立。自作の移動式プラネタリウム・ビジネスがスタートした。
多く子供たちに夢を
北村氏が手作りにこだわった理由は、「手軽に楽しめること」と「手作りの凄さ実感してもらうこと」を目指したからだ。
開業当初、ほとんどなかった依頼も今では大幅に増加。年間1万人弱の老若男女が、手づくりプラネタリウムを楽しむ。一般的なプラネタリウムの年間入場者が6000人弱であることを考えれば、その人気ぶりが分かる。
この背景には、自作プラネタリウムは低コストで楽しめるという強みがある。最近はホームプラネタリウムがブームで、自治体なども移動式プラネタリウムを導入して、小学校などに出張している。だが、投影機材は市販品のため初期コストは数百万円。これを回収するためか、1日の投影費は15万円前後にもなっている。
一方、「コストは材料費くらい」という手作りプラネタリウムは、1回当たりの投影費は3500円。25人収容できるとすれば、入場者が実負担しても100円強と気軽に上映を楽しむことができるわけだ。
「本音を言えば、もう少し儲かってほしい」と笑う。現在、小学校が休みでイベントなどが開催される土日や休日が活動の中心。イベント開催が重なる春秋の土日には全国から声がかかる。そんな時期だけでも、スタッフを雇えば足を運べる先も増えるのではないだろうか。だが、そんな考えを一蹴する。
「僕のプラネタリウムは、ミュージシャンのコンサートのようなもの。投影機から上映、ナレーションまですべてが手作りだからこそ、感動を与えることができる」と北村氏。さらに「最近はものを作れない子供が増えている。手作りでも、ここまで凄いことができると伝えていきたい」と語る。
ひとりでも多くの子供たちと感動を共有したいと、理科や総合学習など授業内でプラネタリウム上映を実現できるよう認知活動に取り組もうと考えている。
そうした場で声がかかるようになれば、稼働率は一気にアップする。しかも、リピートにつながる可能性も期待できる。例えば小学5年生で星の学習があれば、プラネタリウムを見る子供たちは毎年入れ替わる。実は、「多くの子供たちに感動を」との思いが実現するほど、ビジネスも大きくなるというわけだ。
パソコンは苦手というだけに、ホームページ(HP)はあるものの、ほとんど更新していない状態。それでも手づくりの良さや話題性が口コミで広がって、ここまでビジネスが広がってきた。今後は、もっと多くの人々に自作プラネタリウムを知ってもらうため、HPなども活用して積極的なプロモーション活動に取り組む。
「自作の星空で、宇宙の感動をもっと多くの子供たちに伝えたい」と北村氏。その夢の実現に向け、今日も自作プラネタリウムを抱えて全国を駆け回っているはずだ。

[ 写真 ]
左:手づくりプラネタリウムを見た子供たちから寄せられた手紙の数々
右:大学時代から愛用する手づくりの投影機を持つ“ヒゲキタ”こと、北村満氏





