福祉サービス最前線/復泉会「くるみ共同作業所」 自立支援法の荒波乗り越え、障害者の収入アップに挑む

福祉サービス最前線


自立支援法の荒波乗り越え
障害者の収入アップに挑む


復泉会「くるみ共同作業所」
http://kurumi.sub.jp/


昨年10月に本格施行された「障害者自立支援法」が、福祉現場を混乱させている障害者の経済的負担が大幅アップしたからだ。
静岡県浜松市の復泉会は、この荒波を独自商品の開発で乗り越えようとしている。

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 「障害者の生活を保障できるよう、工賃アップの工夫やオリジナル製品開発などに、一層の努力をしなければならない」
 こう語るのは社会福祉法人復泉会の永井昭理事長だ。復泉会は浜松市内10カ所で福祉施設を運営しており、現在は約120名の知的障害者に対する生活・就労支援等を行なっている。

 しかし、障害者福祉を取り巻く環境は厳しい。昨年10月に障害者自立支援法が施行されたからだ。復泉会もこの荒波に直面しており、永井理事長は対応に追われる毎日である。
 自立支援法の荒波とは、福祉・医療サービスを受ける障害者の経済的負担が大きくアップしたことだ。
 従来、福祉・医療サービスの負担額は、助成を受ける人の年収によって決められていた(応能負担)。例え高額な医療サービスを受けたとしても、自らが支払える範囲内での請求しかされなかったのである。

 ところが自立支援法では、受けたサービスの総額に対し、その1割を障害者が負担する応益負担に変わった(非課税世帯などへの配慮措置は別途設定)。復泉会などの施設を利用する場合も利用料負担が課され、助成金で賄われていた施設の食費も全額実費負担となったのである。
 限られた財源の中で福祉サービスを拡充するためには、サービスを受ける障害者にも一定レベルの負担を課そうということだ。従来の国の丸抱えともいえた福祉政策からは180度の方針転換である。これは国の財政事情等を考えれば、やむを得ない側面もあろう。



進まない就労支援

 しかしながら問題は、自立支援法がもう1つのポイントとする障害者の就労支援強化が「ほとんど機能していないこと」(永井理事長)だ。法の主旨は本来、障害者の経済負担は増えるが、同時にそれに見合う収入が得られるよう就労支援を強化することだ。しかしながら、現実にはそうなってはいないのである。
 2000年の厚労省調査では、知的障害者総数は約46万人。そのうち企業や自治体などで就労している人は3分の1ほど。残りの3分の2は福祉施設に通ったり、施設で生活している。

 復泉会の拠点である「くるみ共同作業所」も、そうした施設の1つ。正式には知的障害者通所授産施設と呼ばれる国の認可を受けた福祉施設である。
 授産施設という言葉は一般に馴染みが薄いが、簡単にいえば養護学校卒業後に働きたくても働く場所がない障害者に対して、機能回復トレーニングを施したり仕事を供給し、自立を支援する施設である。
 くるみ共同作業所でも、楽器・自動車の部品製作下請け事業や、一般客などから受注する印刷事業を展開。これらが障害者の収入となり、社会復帰トレーニングにもなっている。

 ただし、仕事の大半は3次、4次の下請けだ。工賃が極端に安いため、「月平均で1万5000円ほどの収入にしかならない」(永井理事長)という。他に月額6万〜8万円ほどの障害者年金があるものの、自立支援法が課した費用負担は障害者にとってあまりにも大きい。

 例えば福祉施設の利用費や食費負担だけでも、月平均3万円近いという。平均1万5000円ほどでしかない施設での収入に対し、その倍近い支出が新たに課せられたわけだ。利用料負担の重さから施設に通えなくなった障害者が増えているというが、それも十分にうなずける状況といえるだろう。
 これに対して、政府も昨年12月に「何らかの負担軽減措置を検討したい」との考えを示すなど、少しずつ現実的な対応を見せ始めてはいる。しかし、障害者の実生活では日々コスト負担が続いている。国の対策をのんびりと待っていられる状況にはないのである。



独自商品の販促を強化

 

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 永井理事長はこうした現状を打破する施策として、施設のオリジナル製品の開発強化を進めている。
 具体的には、県内の施設が連携し、静岡県小規模授産所製品品質向上・販売促進プロジェクトを結成。静岡文化芸術大学と共同で製品開発を進めている。昨年11月には、福祉施設で生産した各種製品に関する消費者アンケートを実施し、食品のニーズが高いことが分かった。

 そこで、現在強化しているのはオリジナルクッキーの開発・販売だ。プロジェクトの第一弾として、この2月に電話受注を開始したのが「ホワイトデー限定クッキー」である(申し込み締め切りは2月28日)。これは静岡文化芸術大学の指導で統一パッケージを作り、そこに自家製クッキーを詰めて500円で販売したもの。品質は申し分なく、地元マスコミなどに取り上げられたこともあって「予想以上の売れ行きだった」という。
 一方では、県内の施設で生産した製品を、共同で販売するネットショッピング・サイト「あしもとネット」(http://6912.teacup.com/rakyo/shop/)を展開している。

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 くるみ共同作業所は、得意の印刷・製本技術を生かした「くるみの凸凹ノート」等をここで販売。これは表紙にネパールの手すき紙を使用し、中紙に凸凹(エンボス加工)をつけ、ボールペンの走りがよくなるように工夫したもの。A6判・100ページタイプで税込100円とリーズナブルだ。先の消費者アンケートでも「ほしいもの」の第2位にランクされるなど、品質への評価は高い。

 また、この4月から浜松市の支援により市役所内に、施設オリジナル製品の売店をオープン。くるみ職員や障害者が売店スタッフとして販売活動を行なっている。
 さらには今後の方向として、飲食店などの運営も視野に入れている。候補の1つがうどん屋だが、うどんの製麺機を導入するなど、本格的な展開を目指したいという。これは味へのこだわりと共に、万が一地域が災害に見舞われた際、被災者への食事供給を行なうなど、地域貢献機能を持ちたいと考えるからである。

 

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  「飲食業の競争は厳しい。他にはない特徴付けが不可欠だが、これを地域貢献機能で打ち出すことを考えている」(永井理事長)
 先のオリジナルクッキーについても、今後は浜松の特産品であるみかんやお茶などを取り入れた独自の商品を開発し、少しでも障害者の収入アップを実現する考えである。

 社会福祉支援というと、多くの人がその重要性を認識しつつも、積極的な参加までは考えていないのが実情だろう。しかし、インターネットを通じクッキーや文具を購入するだけでも、障害者にとっては有効な支援になる。ちょっとした支援の輪が大きく広がれば、障害者の生活環境は確実に変わるはずだ。


[ 写真 ]
上:プロジェクト第1弾商品「ホワイトデー限定クッキー」
中:「くるみの凸凹ノート」はあしもとネット(http://6912.teacup.com/rakyo/shop/)で購入できる
下:復泉会の永井昭理事長