ビジネスチャレンジャー|フォンタナ・フィルハーモニー交響楽団◎中村祐一社長
ビジネス・チャレンジャー

クラシック音楽をもっと身近に!
日本初、会社組織の「交響楽団」誕生
(株)フォンタナ・フィルハーモニー交響楽団
中村祐一社長
オーケストラのクラシックコンサート−−。こう聞くと、敷居の高さを感じる向きも少なくないだろう。世に音楽ファンは数多いが、ポップスやジャズなどと比べ、クラシックは別格視される傾向にある。要因の1つは鑑賞する側にマナーや知識などを、強いられるイメージが強いことだろう。また、生演奏を聴く機会そのものの少なさもあろう。
「このままではクラシック音楽は衰退する」。(株)フォンタナ・フィルハーモニー交響楽団は、こうした危機感を持つ中村祐一社長が、昨年8月に設立したベンチャー企業だ。
中村社長は経営コンサルタントだが、クラシックの愛好家であり、声楽を学んだ経験を持つ。「クラシックをもっと身近にし、演奏家の活躍の場を広げなければ」との思いが設立のきっかけだった。
同社の特徴は、オーケストラによる演奏活動を事業目的としていること。既存のオーケストラ組織は公益法人や非営利団体などであり、平均では運営費の5割近くを自治体の助成金や企業の支援金等で賄っているという。実質は赤字状態だ。しかも、昨今の経済情勢の変化から、さらなる財政難に直面するオーケストラが増加しているという。
これに対してフォンタナ・フィルハーモニー交響楽団(以下FPO)は、最初から営利を目的とした株式会社として発足し、自らの演奏活動による事業収入での黒字運営を目指している。株式会社組織のオーケストラは「日本では初めて。世界でもほとんど例がないはず」(中村社長)。クラシック業界における、経営という未知の領域へのチャレンジャーなのである。
交響楽団経営を分析
ただし、突出したチャレンジャーに対し、既存の業界関係者が冷ややかな視線を送るのは世の常だ。FPOへも地元大阪を中心に「うまくいくはずがない」といった見方が支配的であり、圧力めいた仕打ちも少なくないようである。
だが、こうした反発は中村社長も覚悟の上。それよりも、なぜオーケストラが赤字運営に陥るのかについて冷静に分析したという。もともと経営コンサルタントであるだけに、こちらは得意分野だ。その結果、多くの場合、著名な指揮者やソリストの出演料が、収支を大きく圧迫していることが分かったのである。
著名な指揮者らは、コンサートに集客するための目玉だ。しかしその出演料は、国内トップクラスの指揮者になると1回当たり800万円ともいわれる。これが諸経費(団員・スタッフの人件費、会場費、宣伝費等)の上に重くのしかかる。チケットの売り上げだけでは賄いきれず、助成金や寄付金などへの依存が当たり前になっているわけだ。
中村社長は著名指揮者やソリストの価値・実力を十分に認めつつも、「そこまで経費をかけずとも、もっと身近にいい演奏を聴かせることが可能。まだ名前は知られていないが、実力を持った演奏家は数多くいる。彼らを軸にした演奏活動を定期的に行ない、ファンを増やせば、会社としての演奏事業を軌道に乗せることができる」と話している。
楽団員の役割
では、身近ないい演奏をどう実現するのか。中村社長はこの難題を、楽団員自らがコンサートの企画や選曲に主体的に参加することで「クリアする」と話している。既存オーケストラで楽団員は、渡された譜面を指揮者の指示通りに弾きこなすことが求められ、選曲に参加することは「まず、あり得ない」(中村社長)。FPOはこの関係を逆転し、楽団員がコンサートの企画者となって、自らのよさを伝える活動をしていこうというわけである。
とはいえ、営利を目的とする以上、自分たちの主張を押しつけるだけでは客がついてこず、収入につながらない可能性もある。FPOが楽団員に求める主体性とは「顧客が満足し、リピートにつながる活動を自らが企画すること」。そのためには、顧客が望む演奏や、チケットを買ってもらうためには何が必要かなどを肌で感じ取らなければならない。

△6月から本格的な公演活動を行なうフォンタナ・フィルハーモニー交響楽団
オーケストラの身近な演奏というと、ポップスのヒット曲などを選曲するケースも多いが、そうしたアプローチには否定的だ。あくまでもクラシック音楽の魅力を広めることが目的だからだ。そして、そのための企画を会社が押しつけるのではなく、楽団員主体で展開しようという考え方である。
目指すは「劇団四季」!?
FPOには現在、90名の楽団員と100名の合唱団員が登録しており、現状はコンサートごとの出演料として報酬が支払われている。
しかしながら次のステップでは楽団員をFPOの社員として雇用し、生活の安定を図ると共に組織力をより強化する計画だ。この形で経営を安定させるための当初目標を、年間250公演、年商25億円以上と試算する。
1公演当たり平均1000万円の売り上げが必要だが、課題はそれだけの数の公演をこなせるのかや、それだけの集客・売り上げが見込めるのか、などである。
まず公演数だが、FPOは1つのオーケストラですべての公演を行なう考え方ではない。「フォンタナ・フィルハーモニー・オーケストラ」を統一ブランドとし、例えば東京でフルオーケストラの公演を行なう日に、大阪で別の楽団員による弦楽四重奏コンサートを行なうといった具合だ。
これはミュージカル「劇団四季」に近い考え方といえよう。劇団四季は05年度に3099回の公演を実施している(同社HPより)。単純計算で1日8公演以上だが、このすべてを同じメンバーで行なったわけではなく、1000名以上の所属俳優やスタッフが「劇団四季」ブランドのもと、全国で各種演目を公演した結果である。FPOの構想は、これとよく似たものといえるだろう。
もっとも、そこまでの道が平坦ではないことを、中村社長も熟知している。そのための第一歩として重視するのは「フォンタナ・フィルハーモニー・オーケストラとしての独自カラーを明確に打ち出すこと。そして個々の楽団員が主張し、個々にファンを増やしていくこと」である。
まずはエンターテインメント会社としての骨格を、いかに創出するかだろう。これが実現すれば、集客という課題も自ずと解決に向かい、企業協賛など副次的な収入の道も大きく開けるはずだ。
この6月から演奏活動を本格化するFPO。その成果がクラシック業界をどう変革するか、中村社長の手腕問われることになる。

(株)フォンタナ・フィルハーモニー交響楽団
設立:2006年8月 社員数:8名 登録演奏家数:楽団員90名、合唱団員100名
事業内容:クラシック音楽の演奏活動等
所在地:〒531-0074 大阪市北区本庄東1-10-17-1F
連絡先:TEL 06-6374-4333/Eメール info@fpo.ne.jp
●今後の公演予定等については同社HPまで。
URL:http://www.fpo.ne.jp/
[ 写真 ]
中村祐一社長





