「Windows Vista&Office 07」徹底ガイド|Part1
特集「Windows Vista」
2007年1月30日 発売開始
「Windows Vista」&「2007 Office System」
徹底ガイド
ついにリリースされたマイクロソフトの新OS「Windows Vista」(以下ビスタ)。10年前に登場したWindows 95以来の大幅リニューアルが売りである。
「Windows Aeroユーザーインターフェース」に代表される新機能ばかりが注目されているが、これだけではビスタの本当の姿は分からない。ビスタを導入する価値はあるのか——。
これを読めば、その答えも自ずと見つかるはずだ。
ビスタと共に大きく刷新された「2007 Office System」と合わせて解説しよう。
PART1:「Vista」とは何か
PART2:「2007 Office System」とは何か
PART3:Vistaへの素朴なQ&A
PART1「Vista」とは何か
「見通し」を意味する新OS
3つの開発コンセプト
英語である「ビスタ」を、日本語に訳すと「見晴らし」「見通し」といった意味になる。ここには、「デジタルの世界で、先を見通したOSを提供したい」というマイクロソフトの思いが込められている。
これを具現化するための開発コンセプトは①More Responsibility(モア・レスポンシビリティ:安心)、②More Information(モア・インフォメーション:新しい情報管理)、③More Opportunity(モア・オポチュニティイ:機会)——この3つだ。
まず、①のモア・レスポンシビリティとは、セキュリティのこと。現在のネットワーク環境では、10年前には考えられなかったウイルスやスパイウエア(*1)といった様々な脅威にさらされている。パソコンを使う上で、ユーザー自身がこうしたリスクに対処することは本質的ではない。
そこで、ユーザーがネットのリスクを気にせずに安心してパソコンを使える環境を提供することが、OSの持つ使命の1つと考えたのである。
②のモア・インフォメーションとは、新しい情報マネジメントを提案するもの。パソコンが扱う情報量は飛躍的に増加し、今やWindows 95が登場した頃に比べほぼ10倍となった。
かつて、パソコンの付加価値といえば情報を作り出すことであったが、現在は情報を活用することに価値が置かれている。デジタル社会では多くのユーザーが情報のチェックや引用、再構成などに時間を奪われており、ビスタが提案する情報マネジメント手法により、パソコン上の情報管理を効率化することが狙いである。
一方、③のモア・オポチュニティとは、簡単にいうとエンターテインメントのこと。テレビやビデオ、音楽再生機能などを備えることでパソコンは書斎を飛び出し、リビングなどにも進出している。単にワードやエクセルを使うツールに留まらず、デジタル社会ではパソコンを使う機会がさらに広がっていくというわけだ。
パソコンの用途が拡大すれば、従来とは異なる操作性や使い勝手が求められる。OSとして、その部分を追求し新たな活用の機会を提供しようという考え方が、モア・オポチュニティなのである。
ここまでビスタの開発コンセプトを概括したが、最も特徴的で大きく進化したポイントは、①のモア・レスポンシビリティと②のモア・インフォメーションだ。以下、この2つを詳述していこう。
(*1)スパイウエア:ユーザーが意図しないプログラムを無断でインストールし、パソコンを勝手に操作する不正プログラムの1種。個人情報を盗んだり、作業を妨害するリスクがある。

△左から「Windows Vista Home Basic」「Home Premium」「Business」。この3つに「Ultimate」を加えた4エディションが、パッケージ版として提供される。企業向けの 「Enterprise」はボリュームライセンスのみで、販売されている。
セキュリティを最優先に設計
前述した通り、①のモア・レスポンシビリティとはセキュリティ対策のこと。ビスタでは、ウイルスやスパイウエア、情報漏えいなど様々な脅威に対して安全を確保するため、セキュリティが大幅に強化された。
XPでも、サービスパック2を提供するなどセキュリティ対策には力を入れてきた。だが、「設計変更までは行なわないため、根本的な対策を講じることができなかった」(マイクロソフト)。このジレンマを解消するように、ゼロから設計することが可能だったビスタでは、セキュリティを最優先コンセプトとして、かなりの労力をかけて作り込んだという。
強固なセキュリティ環境を実現するため、OSの開発体制を刷新。「セキュリティ開発サイクル」を新たに導入したのだ。
これは、XPとは全く異なるアプローチ。まずセキュリティ技術を有する開発者が設計を行なうことで、ビスタの高いセキュリティレベルを実現した。具体的には、ビスタ設計に携わる開発者すべてに、セキュリティの基本的な考え方などを示した分厚いトレーニングマニュアルの学習を義務付け、これをクリアしない限り、どんな優秀な開発者であっても、設計に参加することができないという厳しいハードルを設けた。
さらに攻撃の脅威を分析したリスクモデルを想定し、各パターンを個別に潰していくことにより、セキュリティの漏れを埋めるという徹底ぶりだ。
これだけではない。「セキュア・イニシアチブ・アタック・チーム」と呼ぶ社内ハッカーチームを創設。実際にシステムを攻撃して検証を行い、脆弱な部分を修正すると共に、第三者によるチェックを試みるなど様々な対策を講じている。
■表1 Windows Vistaの製品ラインナップと概要
個人ユーザー向けエディションと 概要
Windows Vista Home Basic
"全エディションの中で最も機能が少ないベーシック版。AeroやMedia Centerは搭載されていないが、検索機能やセキュリティ対策についてはHome Premiumと同じ"
Windows Vista Home Premium
"ビスタらしさを実感できるスタンダードバージョン。Home Basicの機能にAero、Media CenterやDVD作成ツールなどマルチメディア機能を搭載している"
Windows Vista Ultimate
"企業向けも含めた全エディションの中でハイエンドバージョン。Home Premiumと企業向けEnterpriseの機能が盛り込まれており、ビスタのすべてを味わえる"
企業ユーザー向けエディションと概要
Windows Vista Business
一般企業向けのスタンダード版。個人向けとの最大の違いはセキュリティ対策の充実など。Media Centerなどのマルチメディア機能は搭載されていない
Windows Vista Enterprise
"Business版のセキュリティ対策をさらに強化したバージョンで大企業にも対応。情報流出対策機能「BitLocker」を搭載し、Media Centerなどは搭載されていない"
被害が起こりにくい仕組み
ビスタのセキュリティ・コンセプトは「多層化」である。これは、現実の防犯対策と同じ考え方。例えば、泥棒が入らないように玄関や窓に鍵をかける。時には二重鍵やセキュリティ会社の防犯サービスを導入するなど、厳重な対策を行なうはずだ。それでも泥棒に入られることはあるが、預金通帳や現金など盗まれて困る資産を安全な場所に保管しておけば、仮に侵入されたとしても被害を防げる。
万一、セキュリティソフトの監視をかいくぐってウイルスやスパイウエアがパソコン内に侵入しても、システムに不正を働くことができないようにガードする構造をビスタは備えているのだ。
では、搭載機能を、いくつか見てみよう。ビスタのセキュリティの中心となるのが、「ユーザーアカウント制御機能」である。アカウントとは、システムやネットワークにアクセスする権限のこと。ここでは、ビスタにアクセスする権限といえる。
ごく簡単に解説すると、アカウント権限には「管理者」と「ユーザー」の2種類があり、ソフトウエアのインストールやドライバーの更新、レジストリ(*2)の変更などを行なうには、管理者権限でパソコンを立ち上げる必要がある。ユーザー権限ではこうした操作ができないからだ。
実は、XPにもアカウント権限の設定はあるのだが、常に管理者権限でパソコンが立ち上がるように初期設定されているため、多くのユーザーが無意識に管理者権限でパソコンを利用している。だからこそ、インストールやドライバー更新など、システム設定を自由に操作できるわけだ。
だが裏返せば、スパイウエアや第三者にパソコンが乗っ取られた場合、この環境では好き勝手にシステム内部をいじられてしまうことになる。
このため、ビスタでは常にユーザー権限でパソコンを立ち上げ、ソフトのインストールなど必要な時に管理者へ格上げする仕組みが導入されている。つまり、アカウント制御という段階を設ける多層化で、外部からの攻撃を防御しようというわけだ。操作ミスによりシステムにダメージを与える可能性も排除でき、快適な使い勝手を実現する。
(*2)レジストリ:システムやソフトの設定情報をまとめたデータベースのこと。
■表2 Windows XPからWindows Vistaへのアップグレード対応表
現行OSから「ビスタ」に移行する場合、通常より安価なアップグレード版を利用することも可能。
下記の表は、現行OSからビスタ各エディションへのアップグレード対応状況を示したもの。
基本的にはXPで上位エディションへの移行が可能である。なお、詳細はヤマダ電機店頭で確認してほしい。
表2 (*1)上位エディションのアップグレード版の使用が可能だが、新規インストールが必要
新たなリスクにも対応
特に強化されたのが、XP時代には想定されていなかったスパイウエア対策だ。「Windows Defender」を新たに標準搭載している。一般的なセキュリティ対策ソフトと同じ機能で、システム内に潜む不正プログラムの検出・駆除、スパイウエアなどによる勝手な設定変更の監視などを行なう。これにより、ユーザーは、ファイルなどの危険性を意識せずにダウンロードできるようになる。
企業向けエディションやUltimateに特有の機能は、パソコンの利用制限など様々な詳細ルールを設定できる「グループポリシーオブジェクトエディタ」を備えていること。特に注目したいのは、リムーバルメディア(持ち運び可能な記憶メディア)の使用制限設定だ。企業の個人情報流出事件の原因には、社内データを保存した私有パソコンや外部メモリを紛失したというケースが多い。ビスタのグループポリシーでは、リムーバルメディアの「利用禁止」「書き込み禁止」といった設定が可能で、持ち出しが原因の紛失事故を防ぐことができる。
さらにEnterpriseとUltimateエディションには、パソコンの盗難や紛失時にデータを守る「BitLocker」機能が搭載されている。XPではフォルダ単位までは暗号化できたが、それでは日々の業務の中で漏れが出る。ハードディスクごと暗号化し、セキュリティを高めることで情報漏えい対策につなげようというわけだ。暗号を解くには回復キーが必要で、その認証方法には複数の方法が用意されている。
情報流出に関連してファイル共有ソフト(*3)対策も万全。仮に社内感染してもP2P通信(*4)をブロックする機能を備えている。
また、HomeやHome Premiumの個人ユース向け、Ultimateエディションには「保護者による制限機能」を搭載。利用時間帯を制限したり、OS標準のゲームやインストールしたソフトウエアを使用禁止にするといった様々な設定を行なえる。
(*3)ファイル共有ソフト:Winnyなどに代表される、個人間でファイルを直接交換できるソフト。このソフトを原因とした、企業の個人情報漏えい事件が相次いだ。
(*4)P2P通信:サーバーを介することなく、パソコン同士が直接データをやり取りすること。
階層的な情報管理が不要に
次に、ビスタのもう1つの大きな特徴である②のモア・インフォメーションを見てみよう。これは、前述したように新しい情報マネジメント手法を提案するもの。
Windows95の登場以来、XPまでウインドウズOSには、情報を階層構造で管理するディレクトリ方式が採用されてきた。この方法では、ファイルなどを探す場合、どのフォルダに保存したかといった階層を覚えておく必要がある。
情報が少ないうちはいいが、大量に情報があふれている環境では管理が追いつかなくなる。フォルダ内フォルダやデスクトップ、アプリケーションが個別に指定する保存場所など、情報はパソコン内に散在する。実際、目的のファイルを探すのに保存フォルダを忘れ、手間取った経験があるのではないだろうか。
この先、さらに扱う情報量が増えることは確実。ディレクトリ方式は限界と判断し、ビスタでは「検索機能」を大幅に進化させることで、情報管理の方法を変えた。階層をたどって情報を探すのではなく、検索機能を使うことで散らばる情報を管理しようとの考え方である。
この方法なら、階層の奥深くに保存された情報も、すぐに取り出せるようになる。
この意味で、ビスタは検索機能からすべてが始まるといってもいい。もちろん、従来のディレクトリ方式にも対応しており、いずれの方法を選んでも構わない。だが、「一度使うとXP環境には戻りたくない」(ビスタ体験ユーザー)というほど高い利便性を持っているのだ。
検索の使い勝手が抜群に進化
具体的な機能は、「クイック検索ボックス」と「検索フォルダ」だ。クイック検索ボックスとは、スタートメニュー(上部左写真)に用意された検索窓であり、その特徴は「高速で賢い」こと。使い勝手もインターネットで慣れ親しんだ感覚に近く、XPにも検索機能はあったが、それとは比べものにならない。
例えば、あるデータを探そうと検索窓に文字を入力する場合、ビスタでは1文字ごとに検索結果が表示され、文字が増えるに連れ、その結果が絞り込まれる「インクリメンタルサーチ」機能に対応。目的のデータが見つかればそれ以上の入力が不要となる。
検索結果の表示にしても、ビスタではドキュメントなどの1ページ目をプレビューとして確認できる(上部右写真)。XPでは表示されるのはアイコンとファイル名まで。類似のファイルが多数ある場合、どのファイルに目的のデータがあるかを知るには、わざわざソフトを起動して個別に内容を確認しなければならなかった。ビスタなら、プレビュー画面を参照できることから、こうした手間を省くことができるわけだ。
[ 写真 ]左:ビスタのスタートメニュー。ウインドウ下部にある入力窓が「クイック検索ボックス」だ。ビスタの操作は、ここから始まる
右:検索結果の表示画面。アイコンではなく、ドキュメントのトップページが表示されるので、いちいちアプリケーションを起動して内容を確認する必要がない
一方、「検索フォルダ」は、検索条件や検索結果を保存しておく仮想フォルダのようなもの。従来のフォルダ概念を大きく変える機能といえる。
プロジェクトや趣味など、特定のテーマに関連した情報は、フォルダを作って管理する方法が一般的だろう。だが、前述したようにデータが増えてくれば情報は散在し、埋もれてしまう可能性もある。
検索フォルダでは、フォルダ名に検索条件としてキーワードを付しておくことで、パソコン内のどこにデータがあってもフォルダを開けば、フォルダ内で管理されているかのように検索結果を表示。それをクリックすることで、ファイルを開ける。しかも、一度検索した結果も保存してくれるので、フォルダを開けば新たに追加されたデータも含めて素早く情報を表示させることができる。
また、この機能は検索作業の効率化にも活用できる。よく使うキーワードを、フォルダ名にした検索フォルダを作っておけば、クイック検索ボックスに入力しなくて済む。複数のキーワードによる絞込み設定も可能なだけに、その利便性は高い。
ビスタに搭載された様々な機能の背景には、マイクロソフトの強い思いが込められている。
それを理解すれば、新OS「ビスタ」とは何か——。それが分かると共に、その性能を最大限に活用できるはずだ。
*** 注目の新インターフェース「Windows Aero」 ***
ビスタの機能で最も話題が集中しているのが、「Windows Aero」(以下エアロ)。これは同OSの新しいユーザーインターフェースのことで、ウインドウが重なっても背景のウインドウを透かして見ることのできる半透明処理や、「フリップ3D」と呼ばれる紙をめくるような感覚でウインドウを切り替えられる機能などが特徴である。
エアロは見た目の操作が派手なことから、デザイン性ばかりが注目されるが、その本質はユーザーインターフェースの向上にある。前述のフリップ3Dにしても動きの奇抜さを狙ったものではなく、マウスのホイール機能を利用してウインドウを切り替えることで、
デスクトップ上に開いた多くのウインドウから目的のドキュメントを素早く探し出す工夫である。
操作をビジュアル化することで、ストレスのない直感的な使い勝手の実現を目指したものなのだ。
また、時計やカレンダー、付せん機能など「ガジェット」と呼ばれるミニアプリケーションをデスクトップ上に配置して、そこから起動できる機能は小さな利便性を狙ったもの。11種類が標準で搭載されている他、マイクロソフトのガジェット専用ホームページから様々な機能を追加できる。
[ 写真 ]
上:フリップ3Dの操作画面。複数のウインドウを総括して見ることができるので、紙ベースに近い感覚で利用することができる
下:使用できるミニアプリケーションが収められている「ガジェットギャラリー」。デスクトップに配置して利用したいガジェットについては、ここから選択して「サイドバー」に登録する





