医療サービス最前線/オーダーメイド創薬 電子カルテの普及で医療情報の有効活用目指す
医療サービス最前線
オーダーメイド創薬
医療サービス効率化の切り札!
「手書き電子カルテシステム」を開発
●普及が進まない電子カルテシステム
●キーボード操作の煩わしさ等が要因
●電子カルテの手書き入力システムを独自開発
●ヤマダとのパートナーシップで早期普及へ
電子カルテの問題点

いくつかの病院で受診するたびに、その都度同じような検査を受け、カルテを作成。費用や時間も同じようにかかる−−。
誰でも一度や二度は、こうした経験があるだろう。そしてこれを当たり前と思う人が大半ではないだろうか。だが、必要な時に自分のカルテを自由に活用できれば、検査や診察はもっと効率化するはずだ。
これを実現するものとして期待されているのが、電子カルテである。電子カルテとは、医師が記入する紙のカルテを電子システムに置き換えて、デジタル情報としてデータベースに記録する仕組みのこと。
その上で全国の病院・診療所がネットワーク化されれば、どこの施設の医者にかかっても、自分の電子カルテを活用できる。何度も同じような検査を繰り返す必要がなくなり、国の大きな課題である医療費抑制にもつながる。
厚生労働省は当初、06年までに6〜7割の医療施設へ電子カルテを普及させる計画だった。しかし、現状の普及率は十数パーセント止まり。計画には程遠いのが実情である。
一番の理由は、医療施設にとって電子カルテは、現状のシステムのままではデメリットの方が多いからだ。例えば医者は診察とキーボード操作を同時にこなさなければならず、パソコンに不慣れな医者には、それがストレスになる。そして、診察へ集中できないなどの弊害が生じる可能性もある。
しかも、限られた診察時間内でモニターやキーボードに向かう時間が増える分、患者と相対する時間が減少。現在の医療では医者と患者のコミュニケーションが何より重視されているが、この流れに逆行することにもなりかねないわけだ。当然、こうした診察態勢への、患者からのクレームも予想される。
「Dr.Pen Lite」とは?
そこで今、医療現場で注目されているのがオーダーメイド創薬が開発した電子カルテシステム「Dr.Pen Lite」である。
Dr.Pen Liteはキーボードを使わずに、紙とデジタルペンによりカルテ記入ができる「手書き電子カルテシステム」だ。
図は「Dr.Pen Lite」のシステム構成だ。デジタルペン入力による電子カルテの簡単作成はもちろんだが、カルテへの記入終了と同時に記載データがリアルタイムでORCA(日本医師会が推進する医療現場IT化計画で開発された診療報酬明細書作成ソフト)へ伝わり、会計処理も同時に終了する。
つまり、電子カルテを簡単に作成できるだけでなく、診察後の会計などでも、患者の待ち時間を大幅に縮小できるなどのメリットが生じる。
ここでDr.Pen Liteの特徴を整理しておこう。
①入力業務からの解放−−医師、会計担当者は単純な入力作業から解放されるので、その分、診察などの最重要業務へ集中できる。
②デジタル複写−−紙の情報が瞬時にデジタル文章になるので、後の検索や管理が簡単になる。
③業務フローを変えない−−ペンをデジタルペンに持ち変えるだけで、従来の業務フローを変えずにメディカル・ドキュメント(医療文章)の電子化を実現できる。
④既存システムとの連携−−すでにORCAを導入している医療施設にも導入が可能。
これだけの機能を備えたシステムでありながら、価格は約300万円。これは会計システムと連携しないキーボード型電子カルテシステムと同程度。そのコストパフォーマンスの高さからも注目されている。

ヤマダをパートナーに
オーダーメイド創薬の大西洋三社長は、もともと内科医として臨床現場に従事していたが、その際、カルテの電子化の必要性を痛感したという。もっと効率的に電子カルテを作成できないか−−。こう考えた大西社長は以後、独自のアプリケーション開発に取り組んできた。
その際、大きなネックとなったのがカルテの入力方法だ。キーボード型では医師の賛同が得にくく、普及が期待できない。そこで着目したのがアノト機能である。
アノト機能はスウェーデンのAnoto社が開発したペン入力技術。細かい専用ドットが印刷された紙に、デジタルペン(ペン先に小型CCDカメラを搭載したボールペン)で文字や図形などを書くことにより、CCDカメラがそのペンの軌跡(=ドットの軌跡)を読み取り、デジタル情報化するという高度なテクノロジーだ。
しかしながら、ユーザーインターフェースには「手書き」という最もポピュラーな手法を用いている点で注目されている。
この技術を知った大西社長はさっそく同社へコンタクトを取り、電子カルテの新たなシステム開発の協力を要請。セキュリティ対策上、絶対に欠かすことのできないDr.Pen Lite専用のカルテ用紙の提供を受けるなど、今では密接な関係を構築するまでとなった。
このようにDr.Pen Liteは各種の先端IT技術で構成されているが、これらを一括し「Dr.Pen Lite」システムとしてパッケージ化しなければ医療施設への普及は難しい。このパッケージ化を担当するベンダーとして、オーダーメイド創薬が選んだパートナーはヤマダ電機である。その理由について大西社長は「長く安定したシステム供給が可能なこと」を挙げる。
周知のようにヤマダ電機はグループ内にPCメーカーKOUZIROを持つ。同社はBTOなどのカスタマイズPCに定評があるが、その技術をDr.Pen Liteにも応用。余分な機能やスペックを省き、手書き入力の電子カルテシステムとして最適化したマシンをパッケージ化し、オーダーメイド創薬に供給している。

パッケージ化にあたり、その大前提はシステムを構成する各アプリケーションや周辺機器などの相性に、まったく問題がないこと。大西社長は「KOUZIROさんは1台1台を綿密にチェックしながらパッケージを組んでくれており、信頼度が非常に高い」と話している。医療現場ではスペックの高低や新旧の問題よりも、いかに安定して着実に稼働するかが重要だが、KOUZIROのBTO技術がこのテーマをクリアしたというわけだ。
しかも、ヤマダ電機の法人会員には医療関係も多いため、「手書き電子カルテシステムに興味を持つ全国の医療施設にとって、法人営業部が身近な相談・販売窓口となることにも期待している」という。
医者の立場から常々「個人情報であるカルテを、自分で使えない現状はおかしい」と主張し続けている大西社長にとって、電子カルテの普及は悲願であり、医療改革のための切り札である。その実現はヤマダ電機という製販両面に関わるパートナーを得たこれからが本番だ。
写真:大西洋三社長
「Dr.Pen Lite」のカルテ画面





