特別インタビュー◎山田昇社長に問う

山田昇社長

相次ぐ行政の検査・指導を
どう受け止めているのか!?

大阪労働局や公正取引員会など、
監督官庁からの指導や検査が相次いだヤマダ電機。業界最大手の不祥事だけに、マスコミ各社は一時、連日のようにこの問題を取り上げた。
その渦中にある山田昇社長は今、

こうした状況をどう受け止めているのだろうか。




理念に向けた努力が不十分

 ――この上期は、ヘルパー(メーカーからの派遣スタッフ)問題に関して、監督官庁の検査や指導が相次ぎました。3月の大阪労働局(注1)、5月の公正取引委員会(注2)と、世間へのインパクトは大きかった。
山田 まず、この件につきまして、お客様や関係者の皆様にご心配をおかけし、申し訳ありませんでした。深くお詫びいたします。
ヤマダ電機は企業理念を持って経営をしており、その大きな目標の1つとして「社会貢献」を掲げています。しかし、正にそこが問われるようなことが最近、 次々と起きています。そういう理念を持ちながら、社内外的に啓発するというか、そういうことに取り組む姿勢や努力。これが欠けていたことも事実なんです。
その反省もあり、今回はCSR室という社長直轄の部署を作って、法令遵守について今後、全社的に取り組んでいきます。今回指摘を受けた部分についても、行政からの処分を待つのではなく、考えられる範囲で、すでに改善を進めております。
――ヘルパーについては、改善策を講じたようですね。LABI店は基本的に全スタッフを自前にすると。
山田  基本的にはそうです。ただし、段階的にやらないといかんじゃないですか。既存のLABI店にはメーカーさんからの派遣スタッフとして生計を立てている方が たくさんいる。その方たちの都合を1人ずつ聞きながらやっています。一方、LABIの新店舗は最初から自前です。7月にオープンしたLABI池袋店も 100%うちのスタッフです。
また、LABI以外の郊外店は、「派遣スタッフが必要」というメーカーさんについては話し合いの上、派遣依頼書を提出いただいています。うちから要請するということは、一切やっていません。

注 1)07年3月、大阪労働局はヤマダ電機LABI1なんば店、及 び家電メーカー数社を職業安定法違反と認定し、是正指導を行なった。LABI1なんば店は、メーカーと派遣契約を結び同店に派遣されたヘルパーに対して、 直接指揮命令を行なったもの。職業安定法では雇用契約や派遣契約を結んでいない労働者への業務の指揮命令を禁止している。

 

注 2)07年5月、公正取引員会はヤマダ電機に対して、家電メー カーに従業員の派遣を強要した独占禁止法違反の疑いで、本社など数カ所を立ち入り検査した。同法は、大規模小売業者が納入業者に対して、不当な理由で従業 員を派遣させたり、人件費を負担させることなどを禁止している。なお現在調査中であり、`07年10月15日現在で公取委の結論は出ていない。


商慣習と法規制のギャップ

――報道では、ヤマダがメーカーに有無をいわさず人を出させている、との論調が目立ちます。
山田 それは一方的過ぎると思いますよ。現実問題として、「ヘルパーを受け入れてくれないとビジネスにならない」というメーカーさんもたくさんあります。ブランド力や宣伝力のないメーカーさんにとっては、店頭でいかに説明できるかが重要なポイントだからです。
――確かに家電業界には昔から、ヘルパーを重要な販促策として位置づけるメーカーもあります。
山田  私は以前から「ヘルパーは全業界的に廃止なら廃止でいい」といってきました。競争状況が同じになるなら。だけど、そうはいっても弱いメーカーさんもあり、 そういうところは人を派遣しないとやっていけない。しかし、一律に廃止したら、強いメーカーがさらに強くなる。これは消費者にとって本当にいいことなの か、ということです。この問題を棚上げにして、解決はできないと思っていました。
しかし、みんなが一斉にやめるのであれば、それはいいよと。個人的には、できればない方がいいとも思っていますし。
――ない方がいいとは。
山田  ヘルパーの管理は非常に難しいからですよ、特に現場では。職業安定法では本来、ヘルパー管理は派遣契約をしたメーカーがしなければいけない。我われは指示 も命令もできない。これは現場では朝礼もできないし、挨拶のチェックもできないということです。店からすれば、こんな馬鹿な話はないんですよ。
――職安法違反は、ヤマダ電機だけがクローズアップされていますが、実際にはメーカーにも是正指導が入っている。
山田  そうです。我われが指示命令できないことは知っていましたが、朝礼もできない、身だしなみのチェックもできないとはね。小売業なら当たり前のことじゃない ですか。そこまで規制されていることは、業界の大半の人間が知らなかったと思いますよ。業界慣習として、これまでは当たり前でしたらからね。
――公取委が独禁法違反の疑いを指摘した、新店準備のためのヘルパー強要についてはどう考えますか。
山田 これも、今までの商慣習でしたから。指摘されて初めて「ああそうなんだ。新店や改装の応援も駄目なんだ」と。
私の考えからすれば、設備投資して店を出し、売り場を作るわけじゃないですか。そしてメーカーさんに売り場を提供する。メーカーさんは自分たちの商品を 販路拡大のため置くわけですから、普通の考え方なら、メーカーさんが積極的に棚割を取るために応援するというのは常識だと思うのですよね。「それが駄目 だ」ということをいわれたわけです。
――メーカーが、自社の売り場を作る分には問題がない。他社の売り場作りなどを手伝うことが問題視されています。
山田 だけどそこは、みんなで協力してやりましょうということだと思うんですよ。例えばトラックだって各社の商品を混載してくる。その中から、自社商品だけを選別して店内に運ばなければならない。例え台車に半分ぐらいしか積んでいなくても、です。
しかし、普通に考えれば台車に余裕があるのなら「申し訳ないけど、この商品も売り場まで持っていってよ」となりますよね。これは日常的な仕事ですよ、現場レベルでは。
ましてや棚割がきっちりできる売り場ならいいけれど、細かい売り場なんて、メーカーさんごとの作業はできませんよ。幅80㎝の1スパンが5連あるとする じゃないですか。それを、例えば10㎝間隔でメーカーさんが個別に陳列するなんて、できるわけがない。そこに納めるメーカーさんが5社あれば、その方々が 相談しながら棚割をするわけです。お互いに協力し合ってきたわけですよ。
しかし、そういうことも違反の疑いがあるというご指摘ですから、きちんと是正しました。メーカーさんには、新店応援の労働に見合った対価をお支払いしますという契約を申し込みました。

家電業界全体への警鐘

――慣習としてではなく、合理的な関係に変えようと。
山田 そうです。しかし、大手10社さんはいらないといってきました。「自分たちの棚に自分たちが商品を納めるのは当たり前でしょう」と。10大メーカーさんは棚が大きいからそれができる。だけど、それができないメーカーさんは、その契約にほぼ応じてくれました。
――GMS業界などでは、そういうやり方が浸透しているようですね。
山田 要するに、家電業界はそういったことが全然手つかずだったんです。今回うちのことがきっかけで、全業界的に見直そうということになっているわけです。
――確かにヘルパーの慣習は家電業界で何十年も続いており、ヤマダ電機以外の量販店にも派遣されている。そうした中で業界トップのヤマダ電機が追求されたことは、行政側に家電業界の慣習そのものを是正するという狙いがある、と見る関係者も少なくありません。
山田 元々、当業界ではどこでもやっていることなんですよ。正直、何でうちだけがという気持ちもあります。だけど、敢えてそれはいいませんけどね。
確かに今いわれてる問題は、全業界的なコンプライアンス上の未整備という問題でもあるんです。家電量販店業界も2年前に告示(注3)されました。これが徹 底されていなかった。商慣習でずっとやってきたから、それでいいと思っていたんです。それが、いよいよ問題化したということですね、全業界的にね。
 ――ヤマダ電機は、そのスケープゴートのようなものだと。
山田 今、行政にお願いしていることは、具体例をもって指摘してくださいということです。グレーゾーンというのは分からないんですよ。
今回、私も呼ばれたんですけども「そういったことを指摘していただければ、それは直ちに改善します」と申し上げました。そして「調査については、全面的にご協力を申し上げます」といって帰ってきたわけです。
今調査中ですから、あまり細かいことはいえないけれども。うちは誠意を持って協力しているということです。

注 3)05年6月、公正取引員会は「大規模小売業告示」を発表。従 来は独占禁止法における「優越的地位の濫用」の監視対象ではなかった家電量販店やホームセンター、コンビニなどが、新たな監視対象として追加された。同告 示では大規模小売業者が自己の業務のために、納入業者に従業員等を派遣させて使用することなどを原則として禁止している。


業者任せの仕組みを改善

――この7月には環境省・経産省から家電リサイクル法違反の厳重注意処分(注4)も出されました。
山田 リサイクルついては従来、購入いただいた商品をお届けした際に、お客様の方に使用済み家電があれば、委託配送業者がその場で手続きをして引き取る形でした。
今回の件は、委託業者の一部社員が引き取った使用済み家電を個人的に流用し、指定場所へ運ばなかったんです。今年1月の社内調査で明らかになりました。 さっそく関係当局に報告し、社内で徹底的に調べ直しました。不適切な処理を行なってしまったお客様にはお詫びを申し上げ、お預かりしたリサイクル料金をす べてお返ししました。
――一部にはヤマダ電機がリサイクル料金を着服したかのような報道も見られました。
山田 それは、まったくの誤報です。うちもある意味では被害者です。うちが着服したり横流しをした事実はまったくありません。しかし、管理責任は十分感じています。
問題の内容は、リサイクル料金の受け取りや家電リサイクル券の発行を、委託会社に任せる仕組みだったことです。性善説だったんですよ。それが結果的に裏目に出たということです。
――業者に悪意があれば、使用済み家電がなかったことにもできる仕組みだったと。
山田 店でも管理はしていたのですが、使用済み家電に関するお客様とのやり取りは業者が顧客先で行なっており、十分に管理できなかった面がありました。
そこで今回、再発防止のために仕組みを全面的に見直しました。使用済み家電の引き取り手続きは、すべて店で行ないます。料金の受け取りやリサイクル券の 発行を店のスタッフが行ない、配送業者とは完全に分離します。業者は引き取って、店まで運ぶだけ。万が一横流しをしても、店では毎日、発行控えと現物とを チェックしますからすぐに分かる。不正はもう絶対に起きません。
――使用済み家電の不適切な処理は、10月にも同業他社で起こり、過去にも行政処分を受けた家電量販店がある。そうした中で、現行の制度自体を見直すべきでは、との声も増えてきていますね。
山田 1番いいのは(新製品価格にリサイクル料金を転嫁する)前払い方式ですよ。今、パソコンでやっているじゃないですか。リサイクル・環境問題の面からして、最適な方法だと思いますけどね。

「感謝と信頼」とは?

――企業理念に「創造と挑戦」を掲げていましたが、この夏から新たに「感謝と信頼」が加わりました。しかし、こうした理念は他社では昔から掲げている。敢えて今のタイミングで加えたというのは?
山田昇社長 山田 それはね、やっぱりいろいろな記事が出て、好き勝手に書かれたからですよ。一生懸命やってきたんだけど、何だったんだろうと。この前行政に呼ばれた時も、話したんですよ。パパママ店からここまできましたって。
で、何でうちはこういうふうに叩かれなきゃいけないのかと。遵法精神で努力も一生懸命してきたつもりです。確かに未成熟なところもありますよ。だけど、 それは指摘いただければ直してきたと。そういうふうにしているつもりなんだけど。最近は特にひどい。そういう話をしたんですよ。それが原点ですよ。こうい う考え方の。何だろうと、いったい。創造と挑戦だけじゃないよねと。
――「感謝と信頼」の意味するところは?
山田  これまで座右の銘として「創造と挑戦」といってきましたが、これは目的じゃなく手段なんですね。そして冒頭申し上げたように、企業理念の中でも特に私は 「社会貢献」を重視しています。より利益を高めて、納税額を増やすこと。納税することで、国や社会の発展に貢献していきます。
しかし、それをどうやるんだといったら、やっぱり「感謝と信頼」というものが必要だよねと。感謝と信頼を念頭にしながら、企業価値を高めて社会貢献しようという、会社としての思いを込めたんです。
もし、感謝と信頼がなかったら、何を持って企業価値を高めていくのか。単に合理主義でやるのかと。そうじゃないよねと。そこに人間性が介在するわけじゃないですか。相手があるわけじゃないですか。こういった考え方がないと、本物ではない。今はそういう思いでいます。
――具体的に「感謝と信頼」をどう経営に取り入れていくのですか。
山田  例えば社員教育です。私は、店長がリーダーシップをとるべき一番重要なことは「部下育成」だといっています。では、いかに部下を育成するかというと、やっ ぱり職場環境から作らなければいけない。職場環境を整備し、会社への「帰属意識」が生まれるようなことをやっていかないと、本当の部下育成にならない。そ の根底が「感謝と信頼」ですよ。やっぱり、人を中心とした企業経営をやらないといけない。
――帰属意識とは「ヤマダで働いてよかった」とか。
山田 「幸せを感じる」とか。それですよ。やっぱり気持ちの問題が大きい。利益を出せばいいというだけじゃない。合理主義だとか、そういったことだけではないよねと。
――ある意味では反省もしたと。
山田  一生懸命走ってきたその反省だろうなあ。これからの責任ある企業としてね。これを社員ともども共有して、やっていかなきゃならない。「創造と挑戦」は大事 だけど、それだけじゃ駄目ですね。皆に感謝され、信頼されて、そして結果的に企業価値が高まって社会貢献できる。これができるようになれば、うちは永遠に 安泰ですよ。
ちょうど今、その転換点ですね。マスコミにもいろいろ叩かれて。一連の記事は飾っておいた方がいいかもしれないな。こういう時代もあったということで。
(敬称略)

注 4)07年7月、経済産業省と環境省はヤマダ電機が家電リサイク ル法の引渡義務を違反したとして厳重注意処分を発表した。同社の熊谷配工センター、及び京都吉祥院店で引き取った使用済み家電約1600台が、メーカーへ 引き渡されておらず、委託業者によって横流しや不法投棄などが行なわれていた。ヤマダ電機は顧客から預かったリサイクル料金を返金している。