同じものを売って独走する!断トツの公式!~Part3

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P A R T 1  家電量販店業界の優勝劣敗
P A R T 2  ヤマダとコジマの分析比較
P A R T 3  ヤマダの1㎡販・管費の軌跡
P A R T 4  山田昇社長インタビュー
P A R T 5  販・管費の有効活用法


◇P A R T 3 ヤマダの1㎡販・管費の軌跡
販・管費の支払い配分を変動し
ポイント経費の負担を軽減


では、ヤマダ電機は販・管費を、どう遣ってきたのか。PART2の表3を1㎡販・管費を中心に整理すると4つのステージに分類できる(表5)。
・第1ステージ/89年度以前(経営改革着手前)
・第2ステージ/90〜94年度(改革初期)
・第3ステージ/95〜01年度(急成長期)
・第4ステージ/02年度以降(マーケットリーダー期)



環境変化への対応
 第1ステージはバブル経済まっただ中。ヤマダ電機もごく平凡な地域家電量販店だった。同業他社と同様の経営を続けるだけでも成長でき、店頭公開も果たせた時代だった。
 ところが、ヤマダ電機にとって最初の転機訪れる。90年以降のバブル崩壊による大不況だ。従来型の商売だけでは売り上げが取れなくなってきたのである。加えてライバル・コジマの大躍進があった。
 当時の家電量販店業界には、同業他社の地盤には出店しないという、今では信じられない不文律があった。ヤマダ電機もこれを遵守し、群馬と長野で店舗展開していた。


 ところがコジマはこうした不文律をものともせず、積極果敢な出店政策を推進。しかも、当時はメーカー主導だった売価設定をも無視し、「安値日本一への挑戦」を掲げてヤマダ電機の地盤である群馬県にも触手を伸ばしていた。

 

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 この急激な環境変化に対応すべく、ヤマダ電機は改革をスタートした。90年からの第2ステージである。
 第2ステージは改革初期といえ、PC販売を強化する一方で、販・管費の削減に着手した。コジマに対抗するには同等以上の低価格戦略しかなく、それには粗利益率を落とさざるを得ない。その上で営業利益を確保するとなると、地域量販店に過ぎなかった当時のヤマダ電機としては、ただ愚直に販・管費をカットする以外に術がなかったのである。ただし、その手法は渋チン型ではなかった。
 表3(PART2)のように販・管費の総額は増やし、1㎡販・管費を下げたのだ。販・管費以上に売り場面積を増やしたからである。


 売りを取るための必要な金は今まで以上に遣い、無駄な経費だけを削減したのである。
 この施策により、90年度に23万円近かった1㎡販・管費が、94年度は17万円強まで圧縮。一方、販・管費総額は常に前年を上回っていたため、100万円前後だった1㎡売上高が94年度は120万円までアップ。2期続いた営業赤字からの脱出に成功した。これは愚直な販・管費削減策を終え、反転攻勢の時期にきたことの証だった。翌95年からいよいよ第3ステージへシフトすることになる。


接客販売の強化
 急成長期である第3ステージの特徴は、販・管費の増額による売上高の拡大だ。では、その根幹となった販・管費を、どう遣ったのか。
 有価証券報告書から読み取れる販・管費内訳の中で、その伸びが顕著なものは広告宣伝費と人件費の2つである(次ページ表6)。1㎡販・管費が最も低かった94年度は、1㎡広告宣伝費が3万4000円、1㎡人件費が5万6000円であった。それが4年後の98年度には広告宣伝費が5万4000円(2万円アップ)、人件費は8万1000円(2万5000円アップ)と拡大している。


 1㎡人件費の増加とは店員の増加を意味する。1人当たり売り場面積(守備範囲)を見ると94年度は65.8㎡だが、98年度には49.3㎡まで縮小。同面積の店であれば店員が増えた計算になる。この事実は、渋チン型セルフ店舗が蔓延していた当時の風潮に抗うもの。金を遣い、人を雇い、接客して売る方針を明確に推進した結果といえる。


 特にウインドウズ95の発売以降、世の中にはPC初心者が急増した。商品政策としてPC販売を強化していたヤマダでは、店員が初心者に説明し、アドバイスをしながら売り込んでいた。PCブームに伴い、市場の接客要求が高まっていたわけである。
 また、この時期の有価証券報告書では、社員教育に関する記述が目立つ。店長の少数泊まり込み研修(96年度)、PC社員の資格制度(97年度)などは、いずれも売りの取れる社員を、金をかけて育成し始めたことを意味する。これも1㎡販・管費のアップ要因であろう。


 人件費以外ではアフターサービスもコスト要因だが、ヤマダ電機はコストアップを顧みないかのように独自の長期保証「The安心」を94年度からスタートしている。
 このサービスの必要経費は、有価証券報告書に記載がなく不明だが、売った後の長期保証(ヤマダの場合は他店購入品も対象)をアピールする戦略に、金がかからないはずはないだろう。


 他にも有価証券報告書には記載されない様々な施策(金)が、1㎡売上高アップのために投下されたはずだ。こうした態勢を整え、1㎡売上高を高めながら新規出店を積極推進。第3ステージ期のヤマダ電機は、かけ算効果で急成長したのである。


ポイント販促の秘密
 02年度からの第4ステージでは1㎡売上高が120万円台にダウンしている(PART2表3)。この時期からソフト売り場(音楽、映像、書籍等)を急拡大したことが要因とみられる。
 ソフト売り場は広い面積を必要とするが、単価が家電よりも低いため、1㎡売上高は相対的に減少する。データがなく試算できないが、ソフト売り上げを除いた売上高を、ソフト売り場を除いた売り場面積で割れば、現状の1㎡売上高は第3ステージ以上に高いはずである。

 

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 ソフト売り場の新規導入とは、 PART2で述べた「2㎡の売上高を1㎡に集約し、空いた1㎡で別の物を売る戦略」そのものである。しかもソフト売り場は来店頻度が高く、レジ通過客数の公式でもプラスに作用しているはずだ。「ソフト売り場の新設で既存店売上高は5%近く伸びる」(関係者)との証言もあるだけに、その導入効果は見かけ以上に大きいものと思われる。

 

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 さらに第4ステージで特筆できる点は粗利益率のアップだ(PART2表3)。14%前後だった90年代から、03年度以降は20%以上に高まっている。この結果、収益力がアップし、05年度中間決算では営業利益率3.2%、経常利益率4.2%という高実績となっている。
 その原動力がポイント還元であることは間違いない。現金値引きよりも、それ以上に高率なポイントを選択する顧客の多いことが、粗利益率を引き上げた要因であろう。ただしポイントには、使われれば利益が減少するというリスクが伴う。「ポイントの極意は、与えるだけで使わせないこと」との笑えないジョークもあるほどだ。


 だが、ヤマダ電機は顧客が使ったポイント金額を、販・管費処理することで負担を軽減している。販・管費の配分を、ポイント使用を見越して変動させたのである。
 ポイント販促費(顧客が実際にポイントを使った金額)を総額で見ると04年度は610億円以上。同年度の経常利益が482億円だから、ヤマダのポイント販促とは、利益以上の大金を顧客に直接還元するという前代未聞の話なのである。


 ところが1㎡当たりの金額でみると話は違ってくる。04年度の1㎡ポイント販促費は7万5000円だが、これを含めた1㎡販・管費総額は24万9000円だ。この額はポイント販促のなかった90年代と同等である。ポイント販促費は上乗せされたが、その分、他の経費を圧縮。総額は変動させず、配分を変えることでポイントの負担を軽減しているわけだ。


  「還元ポイントをお客が使うのは当たり前。積極的に使われても、ビクともしない企業体質を構築しよう」との決意の表れといえる。今期はポイントの無料配布マシンを全店に導入。傍目には無謀な販促策に映るが、これもヤマダ電機からすれば「今までの経費の一部を、経営努力で顧客に還元できるようになった」という話になる。


同じモノを売って差別化
 では、第4ステージで圧縮された販・管費は何か。1つは広告宣伝費であるが、これは費用の一部をポイント還元という新たな販促手法に充当したと解釈できる。
 人件費も減少しているが、これはセルフ販売であるソフト売り場が拡大したため、1人当たり売り場面積が広がったことによるものだろう。


 ソフト売り場は増客・増収効果に加えて、1㎡人件費の削減効果もあり、その削減額もまたポイント販促費として顧客へ還元されているわけだ。
 消費者からすれば、現金値引きよりも高率なポイントが還元されたりポイント自体を無料でもらえ、しかも家電やそれ以外のさまざまな商品と交換できてハッピー。ヤマダからすれば来店客が増え、粗利益率が高まってハッピー。そして商品が売れればメーカーもハッピーとなる。


 これは「ポイントよりもさらにお得な現金値引き」という旧来型の安売り商法ではなし得ない、三位一体型のハッピー戦略といえる。
 さらにいえば、金をかけて売りを取るという1㎡売上高公式を、高度に応用した販促戦略ということができる。
 ヤマダ電機の成長要因では、派手な安売りや大型店展開ばかりが注目される。これも重要な要素ではあるが、その根底には販・管費の有効活用という極めてオーソドックスな経営手法が根付いている。


 家電量販店の宿命が同じ商品を売ることである以上、扱う商品での差別化、いいかえれば仕入れ原価での差別化は限界がある(メーカーはここが最大の差別化要素)。この前提がある以上、第2の原価である販・管費を有効活用し、独自の付加価値を創造する以外に道はない。その成果は1㎡売上高に、はっきりと現れてくるのである。

 

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