同じものを売って独走する!断トツの公式!~Part2

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P A R T 1  家電量販店業界の優勝劣敗
P A R T 2  ヤマダとコジマの分析比較
P A R T 3  ヤマダの1㎡販・管費の軌跡
P A R T 4  山田昇社長インタビュー
P A R T 5  販・管費の有効活用法


◇P A R T 2 ヤマダとコジマの分析比較
金をかけて増収を続けるヤマダ
踊り場基調のコジマは1㎡販・管費が急低下


 同じ商品を売る家電量販店業界の「経営努力」を計るためには「1㎡当たり売上高×総売り場面積=総売上高」という公式がポイントだ。その重要性は、ヤマダ電機とコジマという宿命のライバル2社の決算数値を分析比較することで分かる。


1㎡売上高の重要性
 結論からいおう。ヤマダ電機が売上高1兆円を超えて、今なお増収を続けている最大の理由は、1㎡当たり売上高(以下1㎡売上高)を伸ばしながら、総売り場面積を拡大(=新規出店の拡大、既存店の増床等)し続けているからである。
 表3を見ると、95年度以降の1㎡売上高は156万円から始まり一時は200万円を越える高水準にあった。これを維持しながら総売り場面積を積極拡大。かけ算効果で、業界トップに登り詰めたことが分かる。

ヤマダ電機とコジマ電気の推移※クリックすると拡大画像が表示されます。


 宿命のライバル・コジマも90年代はかけ算効果を発揮していた。表4のように95〜99年度の1㎡売上高は毎年200万円を突破。96年度には300万円近い実績を挙げるなど、ヤマダ以上のハイペースだ。これを背景に店舗拡大を推進し、無敵の快進撃を続けたわけである。
 ところが21世紀に入り両社は明暗を分けることになる。01年度に5000億円を突破したヤマダは3年後の04年度に1兆円の大台をクリア。今期は1兆3000億円を視界にとらえる。


 対するコジマは2000年度に5000億円を突破したが、以後は毎年5000億円を前後する踊り場基調。要因は1㎡売上高の違いである。
 表4を見るとコジマの1㎡売上高は2000年度以降、急低下している。そのため総売り場面積を拡大しても、総売上高が伸び悩むという負のスパイラルに陥っているわけだ。
 1㎡売上高を落としている場合、まずはここを改善しない限り、大幅増収への転換は難しい。かけ算の一方が減少を続けている以上、もう一方を伸ばしても大きな成果につながらないのは当然であろう。


 打開策は「1㎡売上高の改善」か「より大規模な売り場面積拡大」だ。前者には精緻な戦略が不可欠であり、後者は莫大な資金を投下し続ける必要がある。そのどちらを選ぶかが、経営者の重要な意思決定である。


金をかけて売りを取る
 売上高の公式では「客数×客単価」が広く使われる。これは飲食店など来店と消費が直結する業種には最適の考え方。だが、家電や貴金属など、来店が必ずしも消費にならない業種にとっては盲点がある。来店数は販促で増やせても、レジ通過(=消費)は顧客の判断に委ねざるを得ないことだ。これらの業種がこの公式を使う場合には「レジ通過客数×客単価」と表すべきだろう。
  「1㎡売上高×総売り場面積」の公式も顧客の判断に委ねる部分はある。しかしメリットとして、売れた事実に対し、その実績をいかに1㎡に集約するかという自力の戦略を立案しやすい点がある。


 例えば2㎡で100万円売れているとしよう。この100万円の売り上げを1㎡で取れないかを考えればいいのだ。そして空いた1㎡で別の物を売れば、全体の売り上げは必ず増える。
 一方、レジ通過客数×客単価では「100万円買うお客が、もっと増えないか」や「100万円買ったお客に、もう100万円買ってもらえないか」を考えることになる。だが、どんな優秀な学者が考えたとしても、買うという最終決断を下すのは顧客だ。1㎡売上高の方が、自社主導できる要素がはるかに大きいわけである。


 限られた店舗スペースの中で、1㎡売上高の考え方を徹底するということは、店全体の売る力を高めること。その上で店舗数を増やせば、増収が必然になる。ヤマダ電機の歴史とは、この考え方を創業以来一度もはずすことなく、愚直に徹底してきた歴史といえる。
 では、1㎡売上高を高めるために何をすべきか。答えはシンプルだ。「金をかけること」である。


 表3を見ると分かりやすいが、ヤマダが急成長した95〜99年度は1㎡売上高の上昇に合わせて、1㎡販・管費も上昇している。販・管費とは商品を売るために必要な経費で、広告宣伝費や人件費など。ヤマダ電機は売り上げを伸ばす手段として、金を遣ったわけである。
 コジマもかつては金を遣っていた(表4)。破竹の快進撃を続けていた90年代は1㎡売上高も高いが、1㎡販・管費も高い。1㎡売上高が300万円近かった96年度の1㎡販・管費は38万円。ヤマダより10万円以上も高い。だが、04年度は20万円以上削減し16万円台にダウン。これが、1㎡売上高の減少を招いた最大要因の可能性が高い。



真のローコスト経営
 「金をかける経営」とは、量販店各社が推進するローコスト経営と相反するように思える。「ローコスト=金をかけない」と解釈されがちだからだ。しかしながら、それは単なる渋チン経営でしかなく、継続的に消費者の支持を集め、売り上げを伸ばすことは難しい。
 PART1の表1で31位にランキングされているステップはその典型だ。当時は驚異のローコスト経営としてマスコミの寵児的存在だった。商品の説明や展示、交換などを一切しない「5つのNo(ノー)」を売り物に、価格の安さで急成長。その販・管費率は5%台と確かに驚異的だった。だが冷静に考えれば、お客に何もしないのだから販・管費がかからないのも当然だ。結果は次第に顧客が離れ、96年に経営破綻した。


 この事例は極論に近いが、90年代はローコスト経営の具体策として、セルフ販売型店舗が流行病(はやりやまい)のように蔓延した。店員数を最小限とし、説明をせずお客に勝手に選ばせるスタイルだ。セルフなどと聞こえはいいが、要は金をかけない渋チン店舗だ。販・管費は下がるが、売り上げも下がる。
 流行病が蔓延していた時期でも、ヤマダやコジマ、ヨドバシなどは渋チン店舗を出していない。家電は接客しなければ売れないことを、経験的に学んでいたからであろう。


 彼らが選んだ道は、かけた金以上に売り上げを伸ばし、相対的に販・管費率を引き下げる積極型ローコスト経営である。これが軌道にのれば金をかけた低価格販売が可能だ。同じ商品が同じ低価格なら、金をかけたきれいな店や人の多い親切な店を選ぶのが消費者心理であろう。
 家電量販店の経営を分析する上で1㎡販・管費は非常に重要だ。これは前述したステップの事例でも明らかだろう。もちろん闇雲に金をかけても意味はない。どこに、いくら金をかけ、どんな効果を狙うかは、経営者の能力でありセンスである。

 

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