福島敦子のアントレプレナー対談 No.17
(写真◎乾芳江)パーク24◎西川光一社長
次なる目標は
「予約できる駐車場」
1971年、創業者で現社長の父である故・西川清氏が、駐車場関連機器の製造・販売を目的とした(株)ニシカワ商会を設立。85年にニシカワ商会の駐車場運営管理部門を分離独立させ、パーク24(株)設立。91年に24時間無人時間貸駐車場「タイムズ」の第1号の運用をスタートし、95年にはタイムズ台数が1万台を突破。同年「ニュービジネス協議会・アントレプレナー大賞」を受賞。株式店頭登録(97年)、東証二部上場(99年)を経て、2000年に東証一部上場。04年に西川光一社長就任。06年8月現在のタイムズは件数で約6000件、台数で15万6000台以上を擁するコインパーキング業界の最大手。
http://www.park24.co.jp/
道交法改正の影響
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福島 初めに業界全体のことからお聞きします。駐車場業界は需要に比べて供給量がまだ不足しているとのことですが、今後のビジネスの可能性をどう見ておられますか。
西川 マクロの話をしますと、今、駐車ニーズは1100万台分といわれています。だが、実際の供給量は約500万台分、半分もないんですね。ですから業界全体としては非常に大きな発展の余地があります。
しかし、これはあくまでもマクロの話。ミクロの話をすると、例えば大都市圏の一部では、非常に狭いエリアに当社や他社の駐車場が集中しており、明らかに 供給過剰になっている。全体的な業界の話をすればまだ拡大の余地はあるんですが、局所的なエリアを見ると、今後は差別化をしないとダメなんですね。
逆にいえば差別化さえできれば、仮に駐車場の需給バランスがとれたとしても、その駐車場から車が入っていく。そういう環境を作れれば、今後とも十分に成 長可能だろうと思っています。当社はすでに差別化に着手し始めており、将来的にはもっと利便性の高い駐車場の供給を念頭に、事業を展開しています。
福島 6月1日の道路交通法改正で駐車違反の罰則が強化されました。あれから3カ月経ちましたが、影響はいかがですか。
西川 月次でいろいろなデータを解析していますが、明らかに6-7月は稼働率がアップ。道交法改正の影響と判断していいと思います。特に6月は大多数のドライ バーに「路上に車を止めると、すぐに捕まる」との先入観があったはず。都内の道路はすいていましたし、駐車場の稼働率も上がっていました。
ですが、今は少しずつ下がってきている。これは、取り締まりを強化しているエリアと、そうではないエリアとがあるからです。強化していないエリアは2カ 月、3カ月経つにつれて「ここは大丈夫そうだ」ということがドライバーにも分かってきた。ですから、改正前ほどには戻らないとは思いますが、6-7月の状 況が継続的に続くということもないと思っています。
福島 宅配業者など、どうしても車を止めて作業しなければいけない業種もあります。そういう企業とは特別な提携などもあるのですか。
西川 タイムズビジネスカードの発行を、昨年から始めました。簡単にいうとキャッシュレスカードです。今までもクレジットカードやSuicaなどに対応してきたのですが、これだけではやはりユーザーには、1回ごとに決済し会社に帰って経費処理をして、という作業が必要です。
ビジネスカードを導入いただくと、その会社に何百台の営業車があったとしても、毎月1カ月分の使用料を一括請求させていただき、ドライバーにはキャッ シュレスで駐車場を使っていただける。頻繁に駐車場を使う企業の手間を、少しでも削減したいということで始めました。昨年11月に加入50社でスタートし たのですが、おかげさまで今では450社以上に増えています。
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危機感から生まれたTONIC
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福島 西川社長はパーク24に入られてから、情報部門を長く担当されています。昨年、全駐車場への導入を完了したオンライン情報システム「TONIC(トニック)」(※1)の開発に携わってこられたのですか。
西川 いや、入社当初は情報システムではなく営業情報ですね。駐車場に転用できる遊休地などの情報を集め、これを営業開発にフィードバックする。そのための仕組みを開発していました。トニックの開発に着手したのは6年ほど前です。
福島 オンライン化の必要性を、ご自身が強く感じていたとうかがいました。やはり他社との差別化のためですか。
西川 確かに差別化もあるのですが、当初は危機感の方がより大きかった。2000年当時、当社には3万台分の駐車場がありましたが、集金から機器のメインテナン スまで、その処理をすべて人間がやっていたんです。もっと効率化しないと、完全な人力だけでは限界がある。将来の規模拡大を考えると、絶対にブレイクする 時期がきてしまうと。
打開するにはシステム導入が必要不可欠でした。そして、どうせそういうシステムを導入するのであれば、差別化の基盤となるツールにしよう、ということですね。
福島 オンライン化に関して当初、西川社長とお父様(創業者で当時社長の故・西川清氏)以外の役員は、皆さん反対だったそうですね。
西川 反対というか、よく分からない、という感じでしたね。私を除くと、当時の取締役の平均年齢は57~58歳。システム導入の必要性は理解できるのですが、具体的なイメージがわかないんですね。
システム投資には40億円必要でした。これは、当時の当社の売り上げや利益からすると、とてつもなく大きな投資額です。会議では常に「費用対効果はどうなんだ。本当に必要なのか」というところに話が戻ってしまったんです。
父は反対ではなかったのですが、説得には時間がかかりました。あの世代の割にはパソコンに早くから接していたこともあって、最終的には信用していただいた。「そこまでいうなら」ということで。その代わり全責任を私が取るという形でした。
福島 お父様は、進歩的でかなり柔軟な発想をされる方だったんでしょうね。
西川 何ていうんでしょうねえ。ビジネスセンスなどという格好のいいものではなく、嗅覚というんですかね、商売に対する。それがものすごく強い人でした。「シス テムうんぬんは、よく分からんけれども、そういったものは間違いなく必要だろう」という考えが、感覚としてあったようです。「まあ、そうだよな。そこまで いうならやってみろ」という判断は速かったですね。
| ※1)TONIC(トニック):駐車場内の精算機に通信機能等を内蔵。オンラインによる入出庫管理、時間ごとの売り上げ管理など、様々なデータの把握を可能にしたパーク24独自の情報システム。 |
幼少期から社長を目指す
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福島 お父様が創業された当初は、駐車禁止の看板などを販売されていたそうですね。
西川 もう少し前の話をすると、元々は外資系のファスナーメーカーで働いてたんです。そこから脱サラして起業したのですが、会社を辞めた時には、次に何をするか決めていなかったんですよ。
福島 何も決めないで会社を辞められたんですか。
西川 父は大学を出た年に結婚し、30歳の時には私を含めて子供が3人いたんです。だから生活は決して楽ではなかった。「サラリーマンの限界を感じ、自分で商売をしないと食べていけない」というのが理由だったんです。
何をするか考えていた時に、たまたまある店の前で「駐車お断り」と書いてある手書きの札を見た。最初は「なぜこんなに汚い字で、こんなものを書いたのだ ろう」と思ったのですが、すぐに「こんなに汚い字の紙切れを貼らざるをえないぐらい困っているんだな」と判断。「だったらこれを、きれいな商品として売っ てみよう」ということで始めたんです。これが結構売れて、駐車というものが商売になると分かった。
駐車ビジネスを本格化したのは、パークロックシステム(車を1台ずつロックして料金徴収を行なう駐車場システム)の1号機が商品化されてからです。ふと した時に実際に設置された場景を見て「これは商売になるな」とひらめいたんですね。これを売ろうということから駐車場の専門会社になったんです。
福島 感性の鋭い方だったんですね。汚い手書きの貼り紙を見ただけで、ビジネスを発想し、起業する。普通なら考えも及びませんよね。
西川 90 年頃に駐車場が足りないと大騒ぎになったことがあるんです。その時は、そんなに駐車場が足りないのであれば、米軍の退役空母を買って東京湾に接岸し、そこ を駐車場として開放するということを真剣に考えましてね。実際に空母の売り物があって買えそうだというところまで話が進んだのですが、結局、東京湾に接岸 できないことが分かり、あきらめたんです。
東京湾に接岸できていたら、本当にやっていたと思います。そのぐらい発想のスケールが大きいというか、突飛というか。要はシンプルなんですね。前提条件なしに、本当にフリーな状態で物事を考える。頭の中から可能性を排除しないんです。
福島 次が何も決まってないのに会社を辞めるというのも突飛というか、大胆ですね。
西川 その後、成功したからいいですけど、一歩間違えたら母とその子供達が大変でしたよね(笑)。
福島 西川社長もそういうお父様の独特の嗅覚や感性の鋭さ、大胆な決断力を受け継いでいらっしゃるんでしょうね。
西川 受け継いでは、いないんじゃないかな。父は特殊だと思いますよ。ただ、物事を思考する際、前提条件を排除することは、感覚として身に付きましたね。深く検 討する前からあきらめたり、どうせ無理だからという考えは、思考からは排除する習慣が自然と身に付いてる。そういう考え方で話をすると、怒られましたし ね。「何で、やってもいないのに。検証したのか」と。そういう物の考え方や見方などは教わったなと思っています。
福島 お父様の跡を継ごうと前々からお考えだったのですか。
西川 帰ってこいといわれた時です、具体的に思ったのは。継げとも、継ぐともお互いにいってなかったんです。ただ、子供の頃に父から「自分は10年修行し、10 年経ったらその会社で社長になるか、起業するかを考える」ということを聞かされていました。なので自分も何となく、10年はサラリーマンを続け、それから その会社の社長になるか、事業を興すかを考えようということは思っていましたね。
だから、帰ってこいといわれてからですよ、本当に継ぐかどうかというのは。帰ってこいというのは、継げというメッセージだったのかどうかは分かりませんが、やはり自分の父親がやっている会社なんで、考えますよね、具体的に。
福島 サラリーマン時代にも、その会社の社長になることを考えていたのですか。
西川 会社の社長というと、普通は偉い人というイメージがあるのだと思います。ですが私の場合、父親が小学校の頃から社長の肩書きを持っていましたので、社長という肩書きに対しては、臆するものを感じなかった。
距離のハンディの克服
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福島 先程のトニックですけれども、最初は危機感からというお話でした。しかし、今はこれをサービスツールとして発展させて、ドライバーの利便性を高めています ね。駐車場の位置情報や空車情報を携帯電話やパソコンへ発信したり、クレジットカードやSuicaを使えるようにしたり、ポイントを発行しJALのマイ レージなどと交換可能にしたりと。まさに駐車場を基軸としたサービス業です。こうしたサービスは実際の稼働率への、相当なプラス要因になっていますか。
西川 少なからず効果は出ていると思いますけど、相当といえる程の効果には、まだ至ってはいないですね。例えば当社の駐車場と他社の駐車場が隣接している場合には、会員の方は間違いなく当社の駐車場に入れていただける。その意味では効果が出ています。
ですが、目的地の隣に他社の駐車場があり、100m離れたところに当社の駐車場があった場合、会員の方が当社に入れていただけるかというと、そこまでの 効果は、まだないと思いますね。10mぐらいの差なら多分入れていただけると思うんですけれど。ゆくゆくは、この距離のハンディをなくしたいんです。
福島 距離のハンディですか。
西川 駐車場に関するアンケートを見てもですね「なぜこの駐車場を選んだのか」という質問に対して、85%が「目的地に近かったから」と答えている。海外では料 金の安さが上位にくるんですけれど、日本はここ十何年、距離ですよ。だから、遠くてもタイムズの駐車場から埋まっていくような環境を作れると、これまでの 駐車場業界の常識を覆えせることになる。
距離のハンディの覆えしを、少しずつ形にしていく可能性を持っているのがトニックです。インフラとしては整いつつあるので、後は本当にアイデア次第。よ り質の高い付加価値を提供できれば、距離のハンディをなくせると思うんです。それができたら、この業界で当社は永久に成長できるでしょうね。
福島 概念を覆すという意味では、大型駐車場「タイムズステーション」(※2)の展開もありますね。駐車場自体に集客力を持たせるということで、ライブハウスやスパ(温浴施設)を取り入れるなど、かなり斬新な取り組みだと思います。
西川 駐車場業は、ものすごく地域密着型なんですよ。やはり周辺の方々にどれだけ認知いただき、どれだけ受け入れていただけるかで稼働率が変わってくる。
「タイムズステーション札幌S4-6」の場合ですと、札幌すすきの地区に大型駐車場計画が立ち上がった際、相当マーケティングをしたんです。どういう施設 を作れば、そのエリアの方々に受け入れていただけるかと。その結果、すすきのエリアには小さなライブハウスと大きなコンサート会場はあるけれども、中規模 のイベント会場がないといことが分かった。 「じゃあ、中規模のイベントスペースをうちの駐車場に持ってこよう」ということが元々の発想でした。
そして札幌の有力音楽事務所とタイアップし、年間200日以上は必ずそこでイベントをやるということをコミットしていただきました。それだったら、多くの人に駐車場も使っていただけるんじゃないか、ということです。
福島 年間200日以上もライブをされるんですか。
西川 そうです。ライブじゃなくてもいいんですよ。要はそこでイベントを開くというのが条件なんです。スペースフィーはこの次にしています。その代わりに200 日以上必ずイベントをやってくださいと。スペースフィーが中心になってしまうと、そのフィーが回り回ってお客様にはね返るじゃないですか。
福島 入場料に、ですね。
西川 それは我々としては本位じゃない。そこでフィーを得るよりは、スペースを有効に使っていただき、これを目当てに集まる方が車でこられた時の、駐車料金で回収すればいいわけですから。
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近未来の駐車場とは
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福島 タイムズステーションのような試みで、距離のハンディをなくしていくわけですか。
西川 いや、スパもライブハウスもビル型の大規模駐車場だからこそです。大きいものは集客機能を持たせやすいですから、こちらは施設での差別化を図っていきます。
しかし、距離のハンディをなくしたいというのは、当社で一番多い10台前後の規模の駐車場です。こちらの距離のハンディをなくすためには、施設などは併設できないですからサービス面ですよね。「タイムズクラブ」(※3)だったり、タイムズを使うと何かがある、何かができるというものをやってきたいと思っています。
福島 そのためのインフラは、すでに40億円かけて整備された。後は、これをどう活用するかですね。
西川 将来の発展に向けて、あるいはやろうとしている距離のハンディをなくすということに対して、その準備はできてきた。後はアイデア、実際に提供する商品ですね。
福島 西川社長が考える、近未来の理想的な駐車場のあり方とは、どんなイメージですか。
西川 例えばカーナビは、これからもっと便利になっていくと思います。今のカーナビは目的地を設定すると、その目的地が目的地なんです、当然ですけど。そこに駐車場があるとは限らないんですね。
そう考えた時に一番使いやすいのは、目的地を設定すれば瞬時に周辺の駐車場を検索し、あいているかどうかを把握して、あいていたらそこを予約して、そのスペースまで誘導する。これが本来のカーナビだと思うんです。
しかも移動中に、最初に予約した駐車場よりももっと近い場所の駐車場があいたら、瞬時に予約をそちらに振り替えて、ルートガイダンスもそちらに変わる。 そういうことを自動的にやるのが、将来のカーナビだと思うんです。そこまでいったら、だいぶ楽になりますよ。駐車場を探してうろうろする必要もないです し、安心して渋滞を回避しながら目的地にたどり着ける。
今や携帯電話やインターネットが相当な進化をしており、予約できないものはないんじゃないですか。唯一駐車場だけなんですよ、予約ができないのは。私はこれを何とかしたいんです。
今のようにパークロックがついているとか、車を出す際にいちいち料金を払うということも将来的には全部なくなっていく。勝手に止めて勝手に出ていくけれども、ちゃんとした制御のもとに課金され、決済は別のところで行なわれる。
これが私のイメージする近未来の駐車場ですね。そこには機械設備は何もついていない。ただ、駐車スペースがあるだけです。(敬称略)
| ※2)タイムズステーション:クルマを止めるだけではない付加価値の高い駐車場を目指すパーク24の大型 駐車場ビル。10月20日にオープンした「タイムズステーション池袋」12階建てで287台収容。スパ(温浴施設)や幼児教育・託児施設、カフェ、レスト ランなどを併設する。 ※3)タイムズクラブ:03年4月にスタートした会員制ポイントサービス。所定のポイント数まで貯まると割引券やオリジナルグッズ等との交換ができる。04年からはJALのマイルとの交換なども可能となった。 |
1964年、東京生まれ。89年国士舘大学政経学部を卒業し、同年4月に金属加工機械で国内首位のアマダ入社。93年11月にパーク24に入社し、情報開発部長に就任。94年1月に取締役に就任し、2000年11月にタイムズ24(現タイムサービス)代表取締役就任(現任)。04年1月にパーク24代表取締役に就任。
お話の中で特に印象的だったのは「前提条件を排除する」という考え方です。これがパーク24という企業の原点なのだと思います。駐車場にスパやライブハウスを併設するという発想にしても、普通はなかなか出てこないのではないでしょうか。
今は情報の多い時代ですが、これがかえって余計な固定観念につながることも少なくありません。そういう時代だからこそ、一切の前提条件を排除してまっさらな状態で物事を考えることが重要なのだと思います。西川社長が力説された差別化やサービスの重要性も、その延長線上にある考え方。こうした発想のできる柔軟な企業体質が、駐車場産業をリードする原動力になっていると思います。(談)





